日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 105 (1F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:青木 翔吾(東京大学大学院総合文化研究科)

16:45 〜 17:00

[BPT05-24] ブラジル沖巨大油田から想定されるOAE 1aの二酸化炭素放出量

*狩野 彰宏1 (1.九州大学大学院比較社会文化研究院)

キーワード:白亜紀、海洋無酸素事変、二酸化炭素

過去10年間の探査により,ブラジル沖の深度5000 m付近に巨大油田が発達していることが分った。本州の半分の広さで厚さ150mの油層は化石を含まない孔隙質な炭酸塩岩であり,100万年間程度の短い期間で形成したものとされる。南米/アフリカ大陸の分裂開始時の塩湖で堆積したという見方もあるが,部分的にラミナが発達することや早い堆積速度を考えると,炭酸泉から沈殿した炭酸カルシウム(トラバーチン)である可能性も指摘された。そこで,世界中のトラバーチン研究者がかき集められ,油層の起源が探求されている。間隙率と炭酸塩含有率をともに25%とすると,巨大油田炭酸塩貯留岩は炭酸カルシウムとして約1.23 x 1019モルと計算される。
トラバーチンは急速な炭酸塩沈積システムであるとともに二酸化炭素脱ガスシステムでもある。日本とインドネシアで行ってきた研究結果によると,堆積場からは炭酸塩沈殿をはるかに超える量の二酸化炭素を放出されている。比較的流路の長い奈良県入之波温泉・ジャワ島Pancuran Pitu・スマトラ島Sihopolonのデータで計算すると,炭素ベースでの脱ガス/沈殿量 (G/P) 比は7-18である。この値を巨大油田のサイズに掛け合わせると,巨大油田からは1.2-2.7 x 1015トンの炭素が二酸化炭素として放出されたことになる。これはBerner (1990) により見積もられた地殻無機炭素の2〜5%に匹敵する膨大な量だ。仮に,脱ガスが100万年間かけて起こったことであれば,二酸化炭素の放出速度は現在の化石燃料消費の14~32%に匹敵する。
ブラジル沖の油層炭酸塩が形成した123 Maは海洋無酸素事変 (OAE) 1aが起こった時代である。OAEの背景として,二酸化炭素の濃度増加による温暖化が挙げられ,そのソースとしてオントンジャワ海台などを形成したスーパープリュームや沈み込み帯での火山活動の活性化が候補になってきた。しかし,ここで算出した膨大かつ長期的な脱ガスは候補として十分資格がある。
Berner, R.A., 1990. Atmospheric carbon dioxide levels over Phanerozoic time. Science, 249, 1382-1386.