日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)

17:15 〜 18:30

[BPT05-P12] 東エジプトEl Dabbah地域における縞状鉄鉱層の層序

*鈴木 大志1清川 昌一1池原 実2佐野 貴司3マヘル ダウッド4アブエルハッサン モハメッド4 (1.九州大学、2.高知大学、3.国立科学博物館、4.メノフィア大学)

キーワード:縞状鉄鉱層、新原生代

縞状鉄鉱層は太古代・原生代に出現し当時の表層大気の酸素状態の推定や生物活動の関連などの証拠を残す重要な岩石である.縞状鉄鉱層はその堆積様式から3種類に分けることができる.40~25億年前の火山活動により形成されるアルゴマタイプ,25~19億年前に見られる大陸起源の堆積物とともに堆積する浅海性のスペリオルタイプ,7~6億年前のスノーボールアースと関連のあるラピタンタイプである.約7億年前,スノーボールアースにより地球全土は氷により覆われていた.ヌビア・アラビアンシールドのヌビア側,エジプト中央砂漠東側に分布するグリーンストーン帯には約7億年前の縞状鉄鉱層が見られる(El-Gaby et al., 1990) .この時代は世界的に見てもスノーボールアースにより縞状鉄鉱層が堆積している時代である.本研究では変成度が低いWadi Dabhan地域の縞状鉄鉱層を含む地層について,地質図を作成し,層序・化学組成より堆積場復元を試みる.
本地域は南北に走る左横ずれ断層(wadiを作る)と,東西方向の逆断層を境に4つの地質区分とすることができる.北東地域および北西地域はほぼ水平に地層が堆積しており,火山砕屑岩が主に堆積しており,北西地域では薄い縞状鉄鉱層が含まれる.また陸成層であるHamammat層が不整合で覆っており,ドーム状に開いた褶曲構造を持つ.南東部はハンレイ岩,塊状玄武岩,粗粒な火山砕屑岩が主に堆積し,所々に縞状鉄鉱層が見られる.南西地域は粗粒火山砕屑岩,枕状溶岩,黒色頁岩,縞状鉄鉱層が互層する.地層の連続性がよく北側に急傾斜している.南西地域はハンレイ岩や厚い溶岩が主となり,本地域の基盤部分に相当する.
本地域の層序は下位からハンレイ岩,貫入岩の下部ユニット,縞状鉄鉱層,黒色頁岩,火山砕屑岩,枕状溶岩の中部ユニット,火山砕屑岩の上部ユニットとなり,Hamammat層が不整合で覆っている.南西地域にあたる中部ユニットは中でも地層の連続性がよく,縞状鉄鉱層や黒色頁岩が火山砕屑岩や枕状溶岩と繰り返し堆積している.中でも保存状態の良い露頭で柱状図を作成し,セクション1,2とする.セクション1では約24mの層序のうちに9枚,縞状鉄鉱層がみられ,シルト-泥岩と互層している.セクション1上部の縞状鉄鉱層は火山砕屑岩と接する.縞状鉄鉱層の層厚は30cm~2mであり,縞状鉄鉱層とシルト-泥岩の層理面は明確である.また,シルト-泥岩は上方細粒化である.セクション2では約15mの層序の間に縞状鉄鉱層7枚見られ,黒色頁岩,火山砕屑優勢の砂岩と互層し堆積している.セクション2の下部には6.5mの黒色頁岩が堆積し,その下位には火山砕屑物が堆積する.縞状鉄鉱層の層厚は10cm~1.5mである.
南西地域のセクション1,2についてXRFおよびREE化学分析を行った.セクション2の縞状鉄鉱層の下位に堆積する黒色頁岩に対し,有機炭素量(Corg)と有機炭素同位体比(δ13Corg)測定を行った.結果,有機炭素同位体比は-22.5~-23.5‰,有機炭素量は0.07~0.12wt%を示した.また,縞状鉄鉱層周辺の火山砕屑岩についてICP−MSを用い,微量元素含有量測定を行った.測定により得られたNb,Zr,Yの値をZr/Y−Zr図とNb−Zr−Y図にプロットすると火山島弧起源の領域を示した.
火山岩は発泡が少ない枕状溶岩および塊状溶岩からなっており,縞状鉄鉱層や黒色頁岩以外は大陸起源の堆積物を含まない.つまり,本地域のセッティングは海洋島弧で形成された可能性が高く,縞状鉄鉱層は火山活動の休止期に繰り返し堆積したと考えられる.