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[BPT06-03] 中部ペルム系岩井崎石灰岩上部の炭素同位体層序
キーワード:大量絶滅、ペルム紀、石灰岩、G-L境界
ペルム紀中期/後期(G-L)境界直前のCapitanian末に主要な海棲動物の絶滅がおきた。これまでに北米テキサス、南中国の蓬莱灘、また日本の上村・赤坂などに産する、当時の低緯度地域で堆積した化石豊富な地層の詳細な層序が検討されてきた。Capitanian期後半におきた海水準低下や熱帯動物群の絶滅はグローバル寒冷化を示唆し、それと絶滅原因との関連が議論されてきた。しかし、当時の中緯度域における生物の応答ついてはまだほとんどわかっていない。東北日本、南部北上帯のペルム系岩井崎石灰岩は、南中国地塊の北東延長部、すなわち低緯度ながらも比較的高緯度の陸棚浅海で堆積した石灰岩である。同石灰岩の中・上部(Kawamura & Machiyama, 1995によるUnit 3-7)は生物礁と、また最上部Unit 8は生物礁崩壊時の地層と解釈されている。上部のUnit 7およびUnit 8下部までCapitanianの大型フズリナLepidolinaが産し、また石灰岩のSr同位体比はUint 8の頂部に至るまで0.7068~0.7069という低い値をもつことから、Unit 7およびUnit 8最上部まで、すべてCapitanianに対比される。したがって、G−L境界自体は岩井崎石灰岩の中には含まれないことが確認された。本研究ではUnit 7上部およびUnit 8について、約200枚の薄片観察による化石生物の消長を検討し、さらに石灰岩の炭素同位体比を00層準について測定した。
その結果、大型フズリナなど温暖な浅海環境に適応したペルム紀浅海の動物群の主要な絶滅は、Unit 8の堆積期間中におきたことを確認した。一方、Unit 8の石灰岩の有機炭素同位体比は約 -25.4から -22.3‰の範囲で変動した。無機炭素同位体比は現在測定中であるが、予察的に測られた値はおよそ+4‰であった(Zakharov et al., 2000)。従って両者の差は約 26~29‰となり、岩井崎石灰岩が堆積した浅海では通常の光合成に導かれた同位体分別が起きていたと考えられる。また、両同位体比が共に比較的高い値をとっており、Capitanianの“上村事件”(Isozaki et al., 2007, 2011)を記録していると考えられる。これまで“上村事件”の証拠は低緯度で堆積した宮崎県の岩戸層石灰岩や岐阜県の赤坂石灰岩、そしてクロアチアのVelebit石灰岩からのものに限定されていた。本研究結果は岩井崎石灰岩の最上部での生物礁の崩壊がグローバル寒冷化に関係していた可能性を示唆する。またロシア沿海州のSenkina Shapka地域には、堆積当時の岩井崎石灰岩に隣接して堆積したとみなされるChandalez石灰岩が分布する。このCapitanian石灰岩の炭素同位体比も現在分析中である。
その結果、大型フズリナなど温暖な浅海環境に適応したペルム紀浅海の動物群の主要な絶滅は、Unit 8の堆積期間中におきたことを確認した。一方、Unit 8の石灰岩の有機炭素同位体比は約 -25.4から -22.3‰の範囲で変動した。無機炭素同位体比は現在測定中であるが、予察的に測られた値はおよそ+4‰であった(Zakharov et al., 2000)。従って両者の差は約 26~29‰となり、岩井崎石灰岩が堆積した浅海では通常の光合成に導かれた同位体分別が起きていたと考えられる。また、両同位体比が共に比較的高い値をとっており、Capitanianの“上村事件”(Isozaki et al., 2007, 2011)を記録していると考えられる。これまで“上村事件”の証拠は低緯度で堆積した宮崎県の岩戸層石灰岩や岐阜県の赤坂石灰岩、そしてクロアチアのVelebit石灰岩からのものに限定されていた。本研究結果は岩井崎石灰岩の最上部での生物礁の崩壊がグローバル寒冷化に関係していた可能性を示唆する。またロシア沿海州のSenkina Shapka地域には、堆積当時の岩井崎石灰岩に隣接して堆積したとみなされるChandalez石灰岩が分布する。このCapitanian石灰岩の炭素同位体比も現在分析中である。