日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT07] 地球生命史

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

17:15 〜 18:30

[BPT07-P03] 北海道穂別稲里地域の上部白亜系の地質と年代

*岩瀬 優也1長谷川 卓2 (1.金沢大学大学院自然科学研究科自然システム学専攻、2.金沢大学理工研究域自然システム学系)

キーワード:北海道、穂別稲里、上部白亜系、稲里層、浮遊性有孔虫

新たに調査した岩相および微古生物学的データに基づいて, 北海道穂別地域に分布する白亜系蝦夷層群の地質図を作成した. この地域の稲里層はセノマニアン階に対比されていたが, 事前調査において稲里層として塗色されていた地域からチューロニアン階以降を指示する浮遊性有孔虫化石が産出した. そのため, 高橋ほか(2002)の地質図の一部を改訂する必要があった.
本研究において浮遊性有孔虫化石11属37種を検出した. 基本的に先行研究における層序区分に従っているが, 穂別ダム西側については有孔虫による年代情報を反映して塗色しなおした. その泥岩は稲里層に割り当てられてきたが, 稲里層, ヌタポマナイ層および長和層の3層に区別された. それらは断層で接しており, 新たに複数の断層を認め, 地質図上に引くに至った. 稲里層からはPraeglobotruncana delrioensis, Rotalipora cushmani, Thalmaninella globotruncanoidesなどが産出し, セノマニアン階を示す. ヌタポマナイ層からはDicarinella canaliculata, Marginotruncana marginata が産出し, チューロニアン階を示す. 長和層からはContusotruncana fornicata, Globotruncana arca, Hedbergella holmdelensisが産出し, コニアシアン階からサントニアン階, またはカンパニアン階を示す.
本研究において産出した浮遊性有孔虫の種の多様性は高かった. 多くの個体は白色または淡黄色であり, 再結晶化した方解石で満たされておらず保存状態が良かった. 特に長和層から産出する個体の保存は極めて良好であり, 北海道南部の産地としては例外的である. 例えばC. fornicataは側面の二つのキールや殻表面の孔が明瞭に残っており再結晶の程度は低かった. また同層からはDicarinella hanzawai (Takayanagi)やDicarinella. japonica(Takayanagi)など日本の固有種として知られる種も多数産出した. 形態がかなり多様であったため, 再記載の必要性が示唆された. 個体の保存状態が非常に良いこと(臍部の構造までも確認できた)は, 稲里地域が記載研究に適していることを意味する.