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[BPT08-P01] 長野県中部中新統別所層の冷湧水炭酸塩岩より産出するシロウリガイ類の種多様性
キーワード:Pliocardia、Adulomya、オトヒメハマグリ科、中期中新世、冷湧水
シロウリガイ類は新生代を通じて冷湧水域における主要な動物として進化・繁栄を遂げてきた.同一湧水域内での現生シロウリガイ類の複数種の共存は,硫化水素濃度や塩度,水温への嗜好性の違いによると考えられているが(Barry et al., 1997; Watanabe et al., 2013),化石シロウリガイ類の複数種の共存とその要因についてはあまり議論されていない.長野県に分布する中部中新統別所層は背弧海盆内の陸棚斜面に堆積した泥岩からなり,多様なサイズの冷湧水成炭酸塩岩を包含する.別所層からはこれまでAdulomya uchimuraensisおよび”Calyptogena” akanudaensisが知られていたが,本発表では”C”. akanudaensisの属の帰属を再検討し,さらにPliocardia sp.,Adulomya sp. の2種のシロウリガイ類化石を新たに報告する.これら計4種のシロウリガイ類の産出頻度は炭酸塩岩のサイズによって異なる.すなわち,直径20 m以上の大規模な炭酸塩岩体からは,多数のA. uchimuraensisのほかに,”C”. akanudaensisとPliocardia sp. がまれに産出する.直径1 mほどのより小さな岩体では”C”. akanudaensisが相対的に豊富に産出し,A. uchimuraensisを伴う.数cmサイズの小炭酸塩コンクリーションを含むシルト岩からは,Adulomya sp. が散在的に多数産出する.これらの炭酸塩のサイズの違いは湧水のフラックスや持続期間の違いを示唆しており,別所層内でのシロウリガイ類の種多様性は湧水場間での湧水活動の違いを反映している可能性がある.