日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:*中井 仁(小淵沢総合研究施設)、宮嶋 敏(埼玉県立深谷第一高等学校)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)、座長:中井 仁(小淵沢総合研究施設)

14:00 〜 14:15

[G02-02] 減災アクションカードゲームを用いた留学生向け防災教育

★招待講演

*金子 亮介1久松 明史1渡邉 俊介2村上 祐子3久利 美和4 (1.東北大学大学院工学研究科、2.東北大学大学院理学研究科、3.東北大学大学院文学研究科、4.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:留学生、減災アクションカードゲーム、防災教育教材

「減災アクションカードゲーム~地震・津波編~(久松ほか, 2015)」を用いた児童向けのゲーム形式の思考促進型防災教育の展開について、渡邉ほか(2015)は、児童が楽しみながら繰り返し防災学習に取り組める教材であることを示した。国外渡航時は、その国の情勢とともに、災害の特徴を把握しておくことが望ましい。来日する外国人にも同じことが言える。東北大学でも2011年東日本大震災で被災した留学生が、震災時に情報入手が困難であったこと、地域の避難所を活用しきれていないこと、その後も情報入手はおもにインターネットが中心であり、地域の情報へのアクセスが限られていたことが示されている(東北大学大学院理学研究科・理学部評価分析・研究戦略室, 2013)。本研究では、東北大学の留学生の災害への関心と認識、減災アクションカードゲームを用いた安全教育の効果について調査した。児童向けから留学生向けへ変更を行う上で、問題文の設定をキャンパス、通学、商業施設とし、状況把握や避難のための情報収集について議論をしやすい内容とした。
質問紙調査は文学研究科の新入留学生*名の対象の安全教育の場で行った。質問紙調査はDMAC実践前後で行なうこととし、事前質問紙では参加者の災害への関心と認識を問い、事後質問紙ではゲームの評価とゲーム体験後の防災学習への意欲や感想を問うた。また、留学生と高校生の交流事業での同様の調査結果とも比較を行なう予定である。
結果、日本での災害を不安に感じている留学生は約5割であった。また、6割近い学生が洪水や竜巻を災害として認識していなかった。ゲームの評価では8割以上がルールと問題を理解しやすかったと評価し、全員が楽しかったと評価した。また、ゲームで様々なことを学んだという意見が多かった。9割以上の留学生がさらなる防災学習への意欲を示した。ゲームに再び参加する理由として、より多くの状況を考えたいから、他の人との意見交換ができるからという意見が多かった。これらの結果から、減災アクションカードゲームが留学生にとって、周囲との交流を兼ねた防災学習に取り組める教材であることが示された。また、大学の安全講習の一部に取り入れることで、知識だけでなく具体的な状況について話し合い、日本での生活と災害の特徴を理解することにつながっていた。
参考文献:
久松明史ほか、(2015)、参加型防災学習の新教材「減災アクションカードゲーム」の開発と普及、津波工学研究報告、第32号、p301-317.
渡邉俊介・久松明史・山田修司・牧野嶋文泰・金子亮介・久利美和、(2015)、防災教育教材:減災アクションカードゲームの開発と評価.日本地球惑星科学連合2015年大会予稿、G02-05
東北大学大学院理学研究科・理学部評価分析・研究戦略室(2013)、6.4章 震災後の留学生アンケート、東北大学大学院理学研究科・理学部 2011年東日本大震災後の記録