日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*中井 仁(小淵沢総合研究施設)、宮嶋 敏(埼玉県立深谷第一高等学校)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)

17:15 〜 18:30

[G02-P01] 高知県内にある地震津浪碑の3次元デジタルアーカイブ化に向けた取り組み

*谷川 亘1浦本 豪一郎1内山 庄一郎2折中 新3山品 匡史3岡本 桂典4原 忠3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所、3.高知大学、4.高知県立歴史民俗資料館)

キーワード:石碑、デジタルアーカイブ、防災教育、南海地震、SfM-MVS

高知県内各地では、歴史南海地震の被害の様子が文字として刻まれた石碑が建てられている。宝永地震(1707年)から昭和南海地震(1946年)までの南海地震に関連した石碑が多く残されており、現在文献で確認できるだけで約25体ある。特に高知県内の地震津波碑は安政東海地震・安政南海地震(1854年)に関連した石碑が多い。地震津浪碑は供養・慰霊碑としての位置付けだけでなく、歴史資料としての価値も高い。しかし、雨風と植生による風化が進行し、石碑が傷み、解読不能な文字も見受けられる。また、高知県内の石碑は個人や寺社などが所有者であることが多いため、その保全は所有者に委ねられている。そのため、将来発生する南海地震をはじめとした自然災害により地震津浪碑喪失の危惧も否めない。
そこで、本プロジェクトでは地震津浪碑から得られる歴史南海地震の情報を後世へと継承し、防災教育の教材として活用を促進するために、三次元デジタルイメージ化による地震碑の保存、および地震津浪碑と地図情報をリンクさせたウェブブラウザ上での情報提供を行う。石碑の研究といえば、これまで主に刻まれている碑文内容の解読に重点が置かれてきた。しかし、石碑の価値はそれだけでなく、石碑の岩石物理化学的な特徴(鉱物組成・色・帯磁率など)と形状も石碑が製作された当時の文化とその背景を示唆する情報を含んでいる可能性が高い。そのため本プロジェクトでは、石碑の三次元デジタル画像の構築および、石碑の岩石物理化学的なデータの測定を行い、これらの情報をウェブ上に掲載することを計画する。
三次元デジタル画像の構築は、既存のソフトAgisoft社製Photoscanを使用して行っている。また画像構築に必要な写真撮影はRICOH社製のGRを用いた。3D画像を閲覧する方法として①ウェブでの閲覧、および②ウェブサイトから各々のPCへの転送、を検討している。石碑の三次元デジタル画像は、彫られた文字を明瞭に表示させるためにはメッシュ化した面の数を多くする必要がある。しかし、面数が多くなるとデータ容量が大きくなるためブラウザ表示に負担がかかる。そこで①の方法として、WebGL描写の3Dモデルをブラウザ上で表示・シェアできるプラットフォーム[Sketchfab (https://sketchfab.com/)]を採用している。また②の方法として、転送データ形式は3D-PDFとし、3D-PDF対応のソフトウェアで閲覧する方法を採用している。石碑の色測定は分光測色計(KONICA MINOLTA社製 CM-700d)を用いて、帯磁率測定はTerraplus社製のKT-10 S/Cを用いている。
本発表では現在までのプロジェクトの進行状況およびこれまで得られた結果を報告する。