17:15 〜 18:30
[G02-P03] 逃げ地図作成ワークショップを通した世代間コミュニケーションの可能性
キーワード:ワークショップ、逃げ地図、地域防災教育、世代間コミュニケーション
1)はじめに
東北大震災後、日建設計震災復興ボランティア部が考案した避難地形時間地図(通称:逃げ地図)を作成するワークショップが様々な場所で実施されている。逃げ地図は、「どこにいても、どこへ何分で逃げることが出来るか」を可視化することができるツールである。これまで逃げ地図を作成することは、非専門家である住民同士のリスクコミュニケーションを誘発すること、防災教育として有効であることが示されてきた。しかし多世代間のリスクコミュニケーションを促す方法としては、未だ試行段階である。そこで本発表では、多世代で逃げ地図作成を行い、地域の大人や子どもへの影響を考察し、多世代で逃げ地図作成活動を行う有効性を探る。
2)実施概要と方法
静岡県河津町A地区の防災士の方が、防災訓練の方法のマンネリ化に伴う緊張感の欠如を地域の防災士の方が感じていたこと、地域の小学校高学年を対象に逃げ地図を用いた防災教育の展開に参加していたことから、地域の防災訓練の一貫として逃げ地図作成ワークショップを行うこととなった。子どもが上記学習を通して考えたことや得られた情報を大人に共有しながら、再度逃げ地図作成を行った。以下、活動中の観察と活動後の自由記述による感想とヒアリングから得られた結果の中から、世代間のコミュニケーションに関連するものを示す。
3)結果
〈観察〉地域の大人と子どもがコミュニケーションを図る様子が確認された。ワークショップ開始時には着席せず、手を組み作業を眺める大人の姿が確認された。その後、作業が進んでいくに連れて身体的な距離が徐々に縮まり、逃げ地図作成の色を塗る作業を契機に活発に意見を交換する様子が見られた。
〈大人〉「日ごろ関わりがないね。」、「昔のような地域の子と関わる仕組みがない」というような日常生活における地域の世代間コミュニケーションの課題と、本活動を通して「日常生活で声を掛けやすくなった」、「話すキッカケとなってよかった。」といった感想が挙げられた。
〈子ども〉「いろいろな人の話を聞けて、学校でやったよりもすごく分かった。」、「大人の人たちの考えと自分たち子どもの考えを比べると全く違うことに驚きました。学校とは違う事で来てなるほど!!と思いました…。」といった地域の大人が参加したことにによる学習成果の深まりを示す感想が挙げられた。
4)考察
以上の結果から、逃げ地図作成が世代間コミュニケーションを促進していたと考えられる。また災害情報を含む地域の現状と安全性への課題等の情報の世代間の共有化によって、減災へのリスクコミュニケーションとなっていることだけでなく、日常的な世代間の交流意欲を増進する方法として有効であると考えられる。子どもへの教育的な側面としては、地域の大人とともに学習することが地史や他世代の考えの違いを知ることにつながっていることから、多角的な学習を行う方法としても効果的であると考えられる。ただし他地域での世代間コミュニケーションを想定した実践はまだ乏しいため、活動の活性化を図りながら方法の有効性をさらに示していくことを今後の課題としたい。
【参考文献】
1 木下・山本他(2014)下田市における逃げ地図の活用と展開プロセス-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(3)- 日本建築学会大会講演梗概集2014
2 菊田・木下他(2015) 河津町における小学生向け津波及び土砂災害を考慮した逃げ地図ワークショップ-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(8)-日本建築学会大会講演梗概集2015
【謝辞】本研究は、科学技術機構RISTEX「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」の助成による研究開発プロジェクト「多様な災害からの逃げ地図作成を通した世代間・地域間の連携促進」の研究の一貫で実施している一部です。ここに記して関係諸氏に感謝の意を表する。
東北大震災後、日建設計震災復興ボランティア部が考案した避難地形時間地図(通称:逃げ地図)を作成するワークショップが様々な場所で実施されている。逃げ地図は、「どこにいても、どこへ何分で逃げることが出来るか」を可視化することができるツールである。これまで逃げ地図を作成することは、非専門家である住民同士のリスクコミュニケーションを誘発すること、防災教育として有効であることが示されてきた。しかし多世代間のリスクコミュニケーションを促す方法としては、未だ試行段階である。そこで本発表では、多世代で逃げ地図作成を行い、地域の大人や子どもへの影響を考察し、多世代で逃げ地図作成活動を行う有効性を探る。
2)実施概要と方法
静岡県河津町A地区の防災士の方が、防災訓練の方法のマンネリ化に伴う緊張感の欠如を地域の防災士の方が感じていたこと、地域の小学校高学年を対象に逃げ地図を用いた防災教育の展開に参加していたことから、地域の防災訓練の一貫として逃げ地図作成ワークショップを行うこととなった。子どもが上記学習を通して考えたことや得られた情報を大人に共有しながら、再度逃げ地図作成を行った。以下、活動中の観察と活動後の自由記述による感想とヒアリングから得られた結果の中から、世代間のコミュニケーションに関連するものを示す。
3)結果
〈観察〉地域の大人と子どもがコミュニケーションを図る様子が確認された。ワークショップ開始時には着席せず、手を組み作業を眺める大人の姿が確認された。その後、作業が進んでいくに連れて身体的な距離が徐々に縮まり、逃げ地図作成の色を塗る作業を契機に活発に意見を交換する様子が見られた。
〈大人〉「日ごろ関わりがないね。」、「昔のような地域の子と関わる仕組みがない」というような日常生活における地域の世代間コミュニケーションの課題と、本活動を通して「日常生活で声を掛けやすくなった」、「話すキッカケとなってよかった。」といった感想が挙げられた。
〈子ども〉「いろいろな人の話を聞けて、学校でやったよりもすごく分かった。」、「大人の人たちの考えと自分たち子どもの考えを比べると全く違うことに驚きました。学校とは違う事で来てなるほど!!と思いました…。」といった地域の大人が参加したことにによる学習成果の深まりを示す感想が挙げられた。
4)考察
以上の結果から、逃げ地図作成が世代間コミュニケーションを促進していたと考えられる。また災害情報を含む地域の現状と安全性への課題等の情報の世代間の共有化によって、減災へのリスクコミュニケーションとなっていることだけでなく、日常的な世代間の交流意欲を増進する方法として有効であると考えられる。子どもへの教育的な側面としては、地域の大人とともに学習することが地史や他世代の考えの違いを知ることにつながっていることから、多角的な学習を行う方法としても効果的であると考えられる。ただし他地域での世代間コミュニケーションを想定した実践はまだ乏しいため、活動の活性化を図りながら方法の有効性をさらに示していくことを今後の課題としたい。
【参考文献】
1 木下・山本他(2014)下田市における逃げ地図の活用と展開プロセス-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(3)- 日本建築学会大会講演梗概集2014
2 菊田・木下他(2015) 河津町における小学生向け津波及び土砂災害を考慮した逃げ地図ワークショップ-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(8)-日本建築学会大会講演梗概集2015
【謝辞】本研究は、科学技術機構RISTEX「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」の助成による研究開発プロジェクト「多様な災害からの逃げ地図作成を通した世代間・地域間の連携促進」の研究の一貫で実施している一部です。ここに記して関係諸氏に感謝の意を表する。