日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 地球惑星科学のアウトリーチ

2016年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 101A (1F)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

10:15 〜 10:30

[G03-06] “ジオ”と”エネ”の視点による福島県浜通り地域のスタディーツアー

*小森 次郎1 (1.帝京平成大学)

キーワード:東日本大震災、原子力災害、市民啓発、野外巡検、地質資源、再生可能エネルギー

2011年3月11日の地震と津波,その後の原子力発電所事故,さらに4月11日の内陸地震によって,福島県浜通り地域は甚大な被害を被った.そして,震源の大きさ,被災域の広さと被災者の多さ,ならびに復旧の目途が立たない原子力発電所の過酷事故をみると,我々は何かしらのパラダイムシフトを求められていると筆者は考える.同様の考えは他でも指摘されているが(石田ほか(2011) Ceramic Data Book, 39, 44- 47;田中(2013) 社会学評論, 64, 366-385など),もしこの考えが極端であるとしても,2011年春以降の実態とそこで得た教訓を将来へ伝える責任が我々にあることは間違いない.その為には一人でも多くが2011年春の災害とその後の現状を知り,考え,反応する必要がある.しかし,発災後は盛んであったボランティアは時間が経つにつれて活動の場が限られ(例えば,全国社会福祉協議会http://bit.ly/1jbbHk6),災害復興を兼ねたツアー等も減少している.また,メディア上での被災地の扱いは小さくなり,現地に対する人々の関心は急激に低下している.それでも,特に被災地における地球科学のアウトリーチとしては,三陸ジオパークと北茨城ジオパークによる沿岸部でのツアー企画等がある.また電力資源については,福島第一原発内の見学や,再生可能エネルギーに注目したスタディツアーや体験教室がいくつか行われている.しかし「ジオ (ここではgeoscience, geography)」と「エネルギー」の両方を明確にテーマとして示した例は無いようである.以上を背景として,また以下の理由から筆者は浜通り地域の視察やスタディツアーを行った.
(1) 東北太平洋沖地震と福島浜通り地震は地球科学分野においても特筆すべき事象である.
(2) 常磐炭田は国産の地質資源として貴重な例であり地域に多様な影響を与えたが,一般にはよく認識されていない.
(3) 電気に頼っている我々がその給源に関しては無知で無頓着である.浜通り地域周辺では化石資源,原子力,再生可能資源による各発電事例を見ることができる.
(4) 放射性廃棄物と汚染の問題の理解には地質年代スケールの観点が必要である.
(5) 「ジオ」と「エネルギー」の関係性は強く,一連の流れとして見学することができる.
ツアーを繰り返すことで,定着してきた行程は次の通りである.
常磐炭田の産業遺産-石炭火力発電所-ESCO事業による小水力発電-塩ノ平断層(福島浜通り地震による地表地震断層)-いわき湯本温泉・いわき石炭化石館-いわき市内の仮設住宅-海岸地形と津波被害-復興商店街・商工会-洋上風力発電の陸上開閉所-メガソーラー発電所-避難指示区域の現状視察
発表当日は実施内容の詳細と参加者の認識の事前事後の比較について報告する.