日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 地球惑星科学のアウトリーチ

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

17:15 〜 18:30

[G03-P09] 「微小貝による環境分析と打ち上げ貝を用いた環境教育 ~大阪自然環境保全協会「微小貝プロジェクト」~

*芝崎 美世子1 (1.大阪市立大学大学院理学研究科)

キーワード:微小貝、環境教育ブログラム

「微小貝」は、成貝になっても、わずか数ミリほどの大きさにしかならない小さな貝である。一般にはあまり知られてないが、その種数はかなり多い。
大阪自然環境保全協会の「微小貝プロジェクト」は、これまで、この微小貝をテーマに、自然観察会や教育プログラムの開発、指導者講習会、インターネット教材「WEB図鑑」の開発や全国各地の海岸調査などを実施してきた。また、全国の海岸を調査し、打ち上げ貝を用いた環境教育プログラムの普及に努めてきた。
底生生活をする貝類は、魚類などよりも移動能力が乏しく、周辺の自然環境の影響を大きく受けるため、優れた環境指標となる。中でも、微小貝は、浮遊性、付着性など、多様な生態をもち、アマモや海藻などの剥ぎ取り食、プランクトンなどの濾過食、肉食性、腐肉食性のものまで、様々な食性をもっている。また、海岸地形、礫や砂など底質の違い、海流、潮汐による違いなどにより、その生息量や種構成に様々な影響を受ける。沿岸海域では、岩礁や砂浜、藻場、干潟など、様々な生態系が複合的に重なり合って、相互に関連して存在しており、多様な生物群集や季節変動などを理解するためには、それぞれの生息域(マイクロハビタット)の理解が欠かせない。
微小貝は、打ち上げ貝として、しばしば大量に産出する。こうした打ち上げ貝による観察は、サンプル採集が容易で、シュノーケリングなどの特別な道具を必要としないため、子供から高齢者まで行うことができ、各海岸の自然環境の違いや自然環境の働きを理解するのに役立つ。打ち上げ貝は、海岸形状や周辺地質、河川からの土砂の流入量、天候などの影響を受けて、打ち上げ条件が変わり、同じ海岸でも調査地点の地形や天候により種構成が変化する。しかし、このような打ち上げ貝の微小貝を調べることで、沿岸域の総合的な環境評価に用いることができる。
本発表では、これまで「微小貝プロジェクト」で調べた須磨海岸(兵庫)、尾崎海岸(大阪)、和歌浦(和歌山)、増穂浦(石川)、由比ヶ浜(神奈川)、琴引浜(京都)における海岸別の微小貝出現種、地域特性や環境評価について報告する。また微小貝を用いた環境教育についても解説する。