日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 地球惑星科学のアウトリーチ

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

17:15 〜 18:30

[G03-P13] 平常的地震活動を理解するための震度データベースを用いた「中期予測」

*今給黎 哲郎1小泉 尚嗣2 (1.国土交通省国土地理院、2.滋賀県立大学)

キーワード:サイスミシティ、地震予測、震度データベース、定常ポワソン過程

個人レベルで地震災害に備えるにあたっては、地震に関する正しい知識に基づいた判断がなされることが望ましい。被害が出るような地震の発生については、短期的な予知・予測の情報が出せるような一般的手法は確立されていないのが現状であるが、地震調査研究推進本部による地震動予測地図のような、数十年という期間を対象とした確率的な中長期の予測についてはハザード情報が公開されている。しかしながら、例えば「震度6弱を今後30年間に体験する確率」と言われても日常生活の感覚と比較してそれを理解することは難しいのも事実であろう。一方で、被害は出ないものの記憶に残る程度の震度4や5弱の地震であれば、数ヶ月から数年に1度と言った、日常感覚で十分把握可能な頻度で体験する可能性がある。それを感じるのが自分の住む場所そのもので無くとも、同じ都道府県内のことであるなら、身近な感覚をもって地震への対応を考えるきかっけになることが期待される。
本報告で紹介する「地震予測」手法は、オリジナルの物理的モデルや統計的モデルを新たに提案して、より信頼性の高い手法を確立するための学術的な議論を行うためのものではない。通常の地震活動から当然予想できる地震発生について、一般市民に「相場観」を理解してもらうことを主眼としている。そのために、「地震」イベントをカタログから集計するのではなく、より体感に近い「地震動」に対応する気象庁の震度データベースを用いた手法を採用した。数ヶ月から1年程度の、日常生活の時間に対応した期間において、当たり前に起きている地震の頻度に基づき、分かりやすい表現でやや強めの地震動を体感する確率を示すことで、定常的な地震活動のレベルを理解できることを目指している。震度4といった被害の出ない程度の地震動の体感の延長として、被害が出るような地震の頻度を理解することも可能となり、個人レベルでの地震対策を考える上にも役立つと考える。
「予測」に用いるモデルは、アプリオリな情報として過去の平均的地震発生間隔のみを用いる定常ポワソン過程である。過去の震度データベースに基づき、2015年の地震を都道府県単位で1年間および3ヶ月を対象として「中期予測」した事例を示した(Fig.1)。「予測」として見た場合でも、「適中率」で70%~90%、「予知率」で50%以上が確保されていることも示し、地震活動の理解のためにこの手法を通じて感覚をつかむことの妥当性について議論する。