日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高・大の地球惑星科学教育

2016年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 203 (2F)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)

10:45 〜 11:00

[G04-06] 高大連携の高高度発光放電発光現象の観測ネットワークによる冬季雷スプライトの研究

*小名木 すみれ1鈴木 裕子1鴨川 仁1鈴木 智幸1高校生 高高度放電発光現象観測ネットワーク (1.東京学芸大学教育学部物理学科)

キーワード:スプライト、冬季雷、雷雲

中間圏における放電・発光現象である高高度放電発光現象の1つに位置づけられるスプライトは、大きな対地落雷放電が引き金となって雷雲の上空で発生する。本現象は1925年にC.T.R.ウィルソンによって予言され、ウィルソンのQEモデルによれば落雷位置(電荷中和位置)とスプライト発生位置は雷放電の特性(落雷位置や雲放電電路の伸展方向)に依存するとされている。1990年代になってようやく科学的に発見されたこの現象は、近年の多種多様な観測により雷雲上部の正電荷が落雷により大地と中和されることによりその上空で発生するというメカニズムが考えられている。しかし、スプライトと落雷位置はしばしば水平方向に50 km程度離れているという報告もあり、未解決な問題も残されている。
我々はスプライト発生位置標定精度をより高めるため、大学におけるスプライト研究と高校生のスプライト稠密光学観測網を生かし冬季多点光学観測を行った。さらに、光学観測にはスプライトと落雷の発光を同時に撮影することができるため、両位置関係が把握できるという利点がある。さらに、多数の雷会社により標定された落雷位置を比較することにより多数の研究者により報告されているスプライト発生メカニズムと観測結果の不一致の解消と、スプライトの形状がなぜ多様に存在するのかの解明を目指し、本研究をスタートした。以上の観測より、スプライト発生に起因した落雷の放電経路に依存してスプライト発生位置と落雷位置のずれが生じたという結果が考えられ、スプライトの形状や大きさもこの放電経路に依存しているのではないかという結果が得られた。
大学や研究機関のみでは事実上難しいこの多点での稠密光学観測は、高校生多点観測の連携によりスプライト研究進展の可能性を生み、高校生も研究の最先端に貢献できる理想的な高大連携プログラムの1つであるといえよう。また、高校生の世界最高スプライト稠密光学観測と大学における研究のコラボレーションにより、今後もスプライト研究の更なる発展が見込まれる。