日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高・大の地球惑星科学教育

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

17:15 〜 18:30

[G04-P05] 遠隔教育におけるリモート実験室(1):電子顕微鏡実験

*大森 聡一1 (1.放送大学・教養学部・自然と環境コース)

キーワード:遠隔教育、リモート実験室、走査型電子顕微鏡

放送大学の遠隔教育における,リモート実験室構築の試みを紹介する。
背景
機器を使用した分析実験体験は,科学教養教育の一環として重要である。放送大学では,各都道府県に配置された学習センターにおけるスクーリング(面接授業)で,各種実験科目を開講し,教養としての科学実験科目を提供している。しかし,各学習センターで,高額でメンテナンスの必要な機器を利用した実習に対応することは,予算,スペース,人員的な問題を含んでいる。そのため,高額な機器を用いた科学実験は,主に各講師の個人的な「つて」による機器の持ち込みや借用などによって開講されているのが現状である。したがって,全学習センターに行き渡った均質な開講には至っていない。
最近では,双方向性を確保した「メディアを利用して行う授業」(オンライン授業)をスクーリングの代替とすることが認められている。オンライン授業は,日程や距離的条件によりスクーリングに参加することが難しい学生の負担を軽減する効果がある。しかし,実験科目は開講できないことがデメリットと考えられてきた。
リモート実験室計画
以上の遠隔教育の状況をふまえ,私たちは,最近の分析・観測機器の特性を活用して,リモート・オンラインで機器を用いた実験実習を提供することを目指して,リモート実験室の構築を計画した。その背景には,多くの分析・観測機器がコンピュータコントロールに移行しており,PCのデスクトップ共有やXウィンドウシステムのリモート接続により,主な機能を遠隔操作することが可能になったことが挙げられる。リモート実験室は,実際に機器を操作するという点で,コンピュータ上に仮想実験室を構築するバーチャルラボとは性格が異なる。
電子顕微鏡観察実習
この計画の第一弾として,走査型電子顕微鏡観察実験を面接授業,およびオンライン講義で実現する方法を紹介する。使用機器には,電源のオンオフと試料交換以外の分析操作をWindows のアプリケーション上で行う走査型電子顕微鏡(日立ハイテック製TM3030型)を用いる。観察のための操作は,Windows のリモートデスクトップを用いて行った。およそ5Mbps程度のインターネット回線速度で,直接操作とほぼ同じ感覚で操作可能である。この方法を実用的に運用するためには,安全かつ容易なユーザー‐電顕間ネットワーク接続,および機器を時間共有するための仕組みが必要である。これらについても,現在までに確立した方法を紹介する。