日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高・大の地球惑星科学教育

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

17:15 〜 18:30

[G04-P07] 高校生の研究活動の指導者に求められる姿勢

*川勝 和哉1 (1.兵庫県立西脇高等学校)

キーワード:地学部、なぜ?、指導する、委ねる

さまざまな機会に、高校生の研究活動のありかたについて議論されている。たとえば、グループ研究と個人研究で評価の方法を変える必要があるのか、基礎研究よりも工学や農学系研究の方が高い評価を与えやすいのか、研究内容を評価するのかプレゼンテーションや論文の体裁を評価基準として一定の得点を与えるのか、オリジナリティーやプライオリティーを重視するのか熱意や協調性を重視するのか、指導者の関与をどの程度まで認めるのか、などである。初めて研究活動に取り組む生徒にとって、指導者の役割は重大である。ここでは特に、指導者の関わり方について考察したい。
筆者は10年間SSH指定校である兵庫県立加古川東高等学校で地学部を指導し、その後2014年に現任校である兵庫県立西脇高等学校に異動した。本校でも地学部を指導し、その間12年間連続して文部科学省認定大会で全国上位入賞を続けている。生徒研究を指導するうえで筆者が心がけているのは、生徒に「なぜ」といつも問いかけることである。また、放置するのではなく、基礎的な技術やフォームを教えた上で口を出さないようにすることである。
たとえば、テーマを決める際には、どうしてそのテーマでなければ「ならない」のかをきちんと問う。この問いかけに答えるためには、生徒は動機を具体的にせねばならず、また先行研究をきちんと調べておかなければ目的もあきらかにできない。ただおもしろそうだからという理由では研究をさせない。そのような生徒は、途中で行き詰まり研究を放棄することが多い。次に大切なことは、目的を達成するために、どのような実験や観察が必要なのかを問うことである。目的が明確で先行研究の学習ができていれば、生徒が大きく逸脱した方法を考えることはない。はじめは細かいことをいわずに、生徒にさせてみる。結果が出た頃に報告会を開いて、方針と結果を説明させる。多くの場合には、実験の条件が不統一だったり、誤差がきちんと処理されていなかったりして、使いものにならない。具体的に指摘して、あらためて実験のやり直しを伝える。これによって、実験や観察が研究目的に直線的に向かうものでなければならないことを学習させる。
結果が出たら、生徒同士で考察させる。生徒は知識も経験も乏しいため、せっかくよい結果が出ていても、それをきちんと評価して一般論へと高めることができない。そこで、生徒に行き詰まる原因を説明して、読むべき論文やまとめるべき図表などを指し示す。ここでは、結果から考察を行うように強く指導する。どこかで聞いて知っていた話がごちゃまぜにされて、結果から導き出せないような考察を書く場合が多いので注意を要する。もちろん、図表作成上のルールについても厳しく指導する。たとえば、棒グラフを斜めから見たようなグラフは科学では使わない。最終的には論文にまとめるが、ここでも科学論文の様式をきちんと教える。最初、生徒は手紙のような文章を書き、自分が研究したことなのか、先行研究で示されていることなのかがごちゃまぜにされる。実験結果と考察が一体化することも多い。これらについて正しく指導し、あとは任せる。これが研究指導者に必要な姿勢であろう。
そうすることによって生徒は驚くほどみごとな科学論文を書き上げる。それは一見すると、まるで指導教師が書いたかのように見えるかもしれない。