17:15 〜 18:30
[HCG10-P05] 都市における生物多様性と自然景観の保全-空間の利用調整による自然との共生-
キーワード:自然景観、生物多様性、利用調整、知覚の制約
人口の多くが居住する都市は、緑地、水域等の生物の生息生育環境が少なく、都市における自然との共生や生物多様性の保全に関する関心が高まってきている。国土交通省は、生物多様性の保全を地域づくりのために取り組むべき重要な課題としてあげており、自然の保全・再生や創出としてビオトープの計画、施工等に加え、環境の質の向上、エコロジカル・ネットワークの形成、モニタリング、適切な管理手法の構築を支援している。
里山の復活や再生、河口干潟、河川等の自然が確保された空間の保全・再生だけでなく、都市部の宅地での自然の創出や復元が望まれる。
都市空間は人工化されており自然要素が確保しにくく、人間の存在は野生生物の生息に干渉することから都市における生物多様性の保全は困難である。しかし、コンクリート等に被われた形状を持つ雨水調整池は、都市部の宅地に存在する人工的構造物の一例でありながら、植生が繁茂し鳥類が多種出現する事例としてあげられる。
雨水調整池は、1960年代に宅地の大規模開発に伴い雨水流出に対応するために設けられた。雨水専用調整池は、水難事故を防ぐため金網や柵などで囲まれ人の立入はなく、生物の生息環境となり得ている事例がみられる。凹型の形状をしているため、囲障構造物が金網等により透視性を確保している場合は、調整池外部から内部の自然を眺望することが可能となる。人の立入不可という制約が空間内に自然を保全・創出し、身近な居住環境において自然景観を視覚的に享受することができるという意味で、空間の利用調整が自然との共生をもたらすと言える。
本研究は、都市の自然が保全された空間の利用調整について整理し、生物多様性の保全と自然景観を眺める行為との共生について考察する。特に、空間への立入を禁止し自然景観を眺望するという点では、触覚を制約し視覚を可能にしていると考えられることから、知覚の利用調整に着目する。
調査は、東京都の雨水専用調整池を対象とし、植生の繁茂状況と鳥類の出現状況を把握した。また、空間の特徴を整理し、調整池周辺住民の空間内の自然に対する知覚状況を検討した。その結果、都市の人工的基盤においても自然を創出できる可能性があることが示された。調整池内の自然と視覚、聴覚、嗅覚、触覚等の多様な知覚とのかかわりが整理され、それぞれへの関係の利点と欠点が明らかとなった。調整池内の自然は、季節感をもたらすなどの効果があることが示され、自然と人間との間の境界のあり方や関わり方の議論を行うことが重要だと考えられた。
里山の復活や再生、河口干潟、河川等の自然が確保された空間の保全・再生だけでなく、都市部の宅地での自然の創出や復元が望まれる。
都市空間は人工化されており自然要素が確保しにくく、人間の存在は野生生物の生息に干渉することから都市における生物多様性の保全は困難である。しかし、コンクリート等に被われた形状を持つ雨水調整池は、都市部の宅地に存在する人工的構造物の一例でありながら、植生が繁茂し鳥類が多種出現する事例としてあげられる。
雨水調整池は、1960年代に宅地の大規模開発に伴い雨水流出に対応するために設けられた。雨水専用調整池は、水難事故を防ぐため金網や柵などで囲まれ人の立入はなく、生物の生息環境となり得ている事例がみられる。凹型の形状をしているため、囲障構造物が金網等により透視性を確保している場合は、調整池外部から内部の自然を眺望することが可能となる。人の立入不可という制約が空間内に自然を保全・創出し、身近な居住環境において自然景観を視覚的に享受することができるという意味で、空間の利用調整が自然との共生をもたらすと言える。
本研究は、都市の自然が保全された空間の利用調整について整理し、生物多様性の保全と自然景観を眺める行為との共生について考察する。特に、空間への立入を禁止し自然景観を眺望するという点では、触覚を制約し視覚を可能にしていると考えられることから、知覚の利用調整に着目する。
調査は、東京都の雨水専用調整池を対象とし、植生の繁茂状況と鳥類の出現状況を把握した。また、空間の特徴を整理し、調整池周辺住民の空間内の自然に対する知覚状況を検討した。その結果、都市の人工的基盤においても自然を創出できる可能性があることが示された。調整池内の自然と視覚、聴覚、嗅覚、触覚等の多様な知覚とのかかわりが整理され、それぞれへの関係の利点と欠点が明らかとなった。調整池内の自然は、季節感をもたらすなどの効果があることが示され、自然と人間との間の境界のあり方や関わり方の議論を行うことが重要だと考えられた。