17:15 〜 18:30
[HCG10-P10] The Effect of Forest Management of Secondary Coniferous forests on User's Landscape Appreciation and Psychological Restorativeness
キーワード:Landscape appreciation, Psychological restorative effect, Forest management, Coniferous forest, Subjective restorativeness
◆はじめに
ほぼ同じ林相(カラマツおよびアカマツ二次林)の未整備の針葉樹林(放置林)と整備された針葉樹林(整備林)で、利用者が懐く風景に対する印象および環境の有する回復特性等の環境評価、あるいは短時間の滞在を通じて獲得される心理的回復効果にはどのような違いが生じるのかについて調べた。
◆研究方法
実験は2014年の7月下旬に実施した。場所は東京大学富士癒しの森研究所敷地内における上記の放置林および整備林である。両プロットの面積は(0.25ha; 50m×50m)であり、森林内の物理環境については、照度を除いて気温、湿度、音圧などほぼ等しい環境であった。20~50代の男性の計18名を被験者とした。まず、順番効果を相殺するため、9人ずつ、最初に放置林に暴露され、その後に整備林に暴露されるグループ(グループA)と、最初に整備林に暴露され、その後放置林に暴露されるグループ(グループB)の二つのグループに分けた。全ての被験者は両刺激に各15分間ずつ暴露された。被験者には、両刺激への暴露前後に心理的回復効果を調べる調査票(気分(POMS)、感情(PANAS)、回復感(ROS))への回答を依頼した。また、両刺激への暴露後に、環境評価を調べる調査票(印象評価(SD法)および環境の有する回復特性の評価(PRS))への回答を依頼した。
◆結果
Wilcoxon signed rank testによる比較結果から、環境の有する回復特性(PRS)の点からは、整備林の方が逃避、まとまり、適合性が有意(p<.05)に高いことが分かった。また、印象評価の点においても、整備林の方で高い評価(明るい、開放的、快適、美しい、安心、健康的(p<.05))が得られ、物理環境の違いについても妥当な評価(放置林よりも、整然としている、混雑していない(p<.01))が得られた。二元配置分散分析(環境の違い×暴露の前後)による検定結果では、気分(POMS)、感情(PANAS)、回復感(ROS)の全ての指標において交互作用は確認できなかった。一方、環境の違い(放置林-整備林)と暴露の前後(暴露前-暴露後)のそれぞれの主効果について調べたところ、環境の違いが心理的な回復に影響を与えている関係は見いだせなかった(n.s.)。一方、暴露の前後については、整備林に暴露することでネガティブ感情(PANAS;p<.05)や、緊張‐不安(POMS; p<.05)に影響しそれらを低下させていた。また反対に、放置林においては、活気(POMS; p<.05)に影響し活気感を高めていた。
◆考察
整備林は環境の有する回復特性や印象評価が高い環境であったことから、整備林に暴露されることで被験者が心理的に回復した結果、ネガティブ感情や、緊張感、不安感が低下するに至ったのではないかと思われる。一方、放置林で活気感が上昇した理由は、被験者が全員男性であり、別途実施した性格特性検査にて、神経症傾向が低く外向性の高い集団であったこと、また、整備林に比べネガティブに評価されていた放置林が、前述の性格特性を有する集団にとっては、たとえば、Kaplanの好ましい環境理論におけるミステリを感じさせ、探索心を引き起こすような環境となっていたことなどが考えられる。
ほぼ同じ林相(カラマツおよびアカマツ二次林)の未整備の針葉樹林(放置林)と整備された針葉樹林(整備林)で、利用者が懐く風景に対する印象および環境の有する回復特性等の環境評価、あるいは短時間の滞在を通じて獲得される心理的回復効果にはどのような違いが生じるのかについて調べた。
◆研究方法
実験は2014年の7月下旬に実施した。場所は東京大学富士癒しの森研究所敷地内における上記の放置林および整備林である。両プロットの面積は(0.25ha; 50m×50m)であり、森林内の物理環境については、照度を除いて気温、湿度、音圧などほぼ等しい環境であった。20~50代の男性の計18名を被験者とした。まず、順番効果を相殺するため、9人ずつ、最初に放置林に暴露され、その後に整備林に暴露されるグループ(グループA)と、最初に整備林に暴露され、その後放置林に暴露されるグループ(グループB)の二つのグループに分けた。全ての被験者は両刺激に各15分間ずつ暴露された。被験者には、両刺激への暴露前後に心理的回復効果を調べる調査票(気分(POMS)、感情(PANAS)、回復感(ROS))への回答を依頼した。また、両刺激への暴露後に、環境評価を調べる調査票(印象評価(SD法)および環境の有する回復特性の評価(PRS))への回答を依頼した。
◆結果
Wilcoxon signed rank testによる比較結果から、環境の有する回復特性(PRS)の点からは、整備林の方が逃避、まとまり、適合性が有意(p<.05)に高いことが分かった。また、印象評価の点においても、整備林の方で高い評価(明るい、開放的、快適、美しい、安心、健康的(p<.05))が得られ、物理環境の違いについても妥当な評価(放置林よりも、整然としている、混雑していない(p<.01))が得られた。二元配置分散分析(環境の違い×暴露の前後)による検定結果では、気分(POMS)、感情(PANAS)、回復感(ROS)の全ての指標において交互作用は確認できなかった。一方、環境の違い(放置林-整備林)と暴露の前後(暴露前-暴露後)のそれぞれの主効果について調べたところ、環境の違いが心理的な回復に影響を与えている関係は見いだせなかった(n.s.)。一方、暴露の前後については、整備林に暴露することでネガティブ感情(PANAS;p<.05)や、緊張‐不安(POMS; p<.05)に影響しそれらを低下させていた。また反対に、放置林においては、活気(POMS; p<.05)に影響し活気感を高めていた。
◆考察
整備林は環境の有する回復特性や印象評価が高い環境であったことから、整備林に暴露されることで被験者が心理的に回復した結果、ネガティブ感情や、緊張感、不安感が低下するに至ったのではないかと思われる。一方、放置林で活気感が上昇した理由は、被験者が全員男性であり、別途実施した性格特性検査にて、神経症傾向が低く外向性の高い集団であったこと、また、整備林に比べネガティブに評価されていた放置林が、前述の性格特性を有する集団にとっては、たとえば、Kaplanの好ましい環境理論におけるミステリを感じさせ、探索心を引き起こすような環境となっていたことなどが考えられる。