日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 原子力と地球惑星科学

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、佐藤 努(北海道大学工学研究院)、吉田 英一(名古屋大学博物館)

17:15 〜 18:30

[HCG25-P08] 高レベル放射性廃棄物処分場ニアフィールドの長期力学的挙動評価のための遠心力模型実験手法の開発

*西本 壮志1 (1.(一財)電力中央研究所)

キーワード:地層処分、長期挙動評価、遠心力模型実験、力学的相互作用

高レベル放射性廃棄物処分場周辺(ニアフィールド)の人工バリアと周辺岩盤の長期挙動評価に関する研究において、実規模実証試験や予測数値解析シミュレーションが実施されている。日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターにおいて、現在国内唯一の実規模実証試験「人工バリア性能確認試験」が地下350mで実施されている。数値解析結果の妥当性検証のために実規模試験結果との比較・検討を行うことは数値解析モデルの高精度化のために有効な手段の一つである。しかし、実規模実証試験を実施できる期間は長くても現実的には十数年程度であり、その試験結果を用いて百年単位の長期挙動を予測するための数値解析モデルを高精度化するには限りがある。
遠心力場の相似則を利用した遠心力模型実験は、実物と縮尺模型の応力の対応が良く、力学的・水理的挙動も実物に近い。また遠心力場の相似則における時間加速の効果により、長時間の遠心力模型実験を行うことでニアフィールドの長期力学的挙動の推定に対して有利である。このため実物の長期力学的挙動をある程度推定できる可能性がある。
電力中央研究所ではこの点に着目し、最長6ヶ月の連続運転、最大1.5 tonの模型が搭載可能な遠心力載荷装置と、同装置を用いたニアフィールドの長期力学的挙動評価実験の開発を行ってきた。
本開発では、緩衝材と周辺岩盤の力学的相互作用をターゲットにし、周辺岩盤を含めたニアフィールド模型を作成、長期挙動実験を行ってきた。
まず、周辺岩盤を含めた処分孔1孔・廃棄体1体の領域を抽出し模型を作製した。岩盤は田下凝灰岩、緩衝材はクニゲルV1(100%)、模擬オーバーパックは所定の重量調整を行ったSUSである。模型サイズは遠心力30G場での実験を行うために1/30サイズとした。直径、高さ180mmの円柱岩盤供試体に処分孔を掘削、オーバーパックおよび緩衝材を封入した。実験は、現象理解のために、乾燥状態の模型に対して、深度をパラメータ(地圧に相当する拘束圧5~10MPa)にした等方応力を負荷し、模型下面より間隙水を注水し上面から排出する排水条件下の、水理-力学連成条件である。オーバーパックの温度と境界温度は実験を通じて25℃一定とした(以下、常温実験、と言う)。計測項目はオーバーパックの鉛直変位、ベントナイトの土圧、岩盤のひずみである。実験は最長67日、約165年に相当するデータを得た。その結果、オーバーパックの変位量、ベントナイトの土圧が拘束圧により変化し、かつ実験期間内において収束しないことが分かった。すなわち地圧と時間経過に応じた岩盤の変形挙動とベントナイトの膨潤変形挙動の力学的相互作用によって、オーバーパックの変位量、ベントナイトの土圧に地圧依存性・時間依存性が生じることを実験的に初めて明らかにした。
次に、ヒーターを封入した加熱可能なオーバーパックの開発を行い、同様の模型に対して深度をパラメータにして、オーバーパックの温度を95℃一定、境界温度を平均的な地温勾配に則した温度(30~35℃)に設定し、最長212年(実験時間86日)に相当するデータを得た(以下、加熱実験、と言う)。その結果、加熱実験においても地圧依存性・拘束圧依存性が計測され、大局的に見れば常温実験と類似の傾向を示した。一方で、緩衝材が膨潤を開始したと思われる時点以降では、いずれの計測結果も常温実験とは明らかに異なる挙動が計測された。くわえて、実験中の間隙水の注入流量に着目すると,実験経過時間数百時間後,常温実験では計測されていない流量変化が生じていた。また、加熱実験終了後、模型のX線CT撮影を行い、オーバーパック周辺の緩衝材密度が常温実験より低く飽和密度に達していない結果が得られた。すなわち,高温の廃棄体が緩衝材中の間隙水分布に影響を与え緩衝材の密度が低下,これにより緩衝材の土圧と処分孔内の剛性が低下し,地圧一定条件であるために周辺岩盤のひずみと廃棄体の変位傾向に変化が生じたと考える。