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[HCG26-04] 八重山前弧~琉球海溝域におけるイベント層の堆積過程
キーワード:地震、八重山前弧域、琉球海溝、タービダイト、水中土石流
琉球海溝域南部では,1771年明和津波により石垣島を中心とした地域で大きな津波被害があったことが知られている.しかし,それ以前の地震・津波に関する情報が少なく,再来周期や津波波源域に関して不明な点が多い.Ujiie et al. (1997)は,八重山諸島前弧域の海底扇状地上から採取された海底堆積物コアの1本から地震性と考えられるタービダイト10層準を認定し、その堆積間隔が約1000年であることを明らかにした.一方でAraoka et al. (2013)は,宮古島から石垣島にかけての沿岸に分布する津波石の放射性炭素年代測定から,琉球列島南部における津波の再来間隔を150~400年と推定しており,両者の間には大きな相違がある.タービダイトの堆積頻度は,海底地形等の堆積場の設定により異なってくるので,タービダイトからの地震発生履歴復元の精度を高めるためには,ある程度広範囲から採取した複数のコアをもとにその周辺海域の堆積過程を理解しておく必要がある.このため,「よこすか」のYK15-01航海と「かいれい」のKR15-18航海で八重山諸島前弧域とその南方の琉球海溝底において,海底地形調査・表層地層探査および海底堆積物の概要,特にイベント層の挟在状況について調査を行った.そのうち2本のピストンコア試料については,放射性炭素年代測定にもとづいてタービダイト堆積間隔の見積もりを行った.
石垣島~西表島南方で,浅海からの海底谷が前弧海盆に達した付近には,石灰質の生物源を主とする砂質堆積物が分布し,これらの海底谷が主に生物源石灰質からなる粗粒物質の供給ルートであることを示唆する.前弧海盆に形成された海底扇状地上で採取されたピストンコア試料には,貝殻片やサンゴ片などの石灰質生物遺骸の破片を多く含む極細粒砂~中粒砂のタービダイトが挟在し,扇状地上では北側(扇頂部)に向かってタービダイトの粗粒化及び厚層化が確認された.しかし扇状地北東側(扇央部)と南西側(扇端部寄り)からの2本のコアについての年代測定結果から推定されるタービダイトの堆積間隔は,共にUjiie et al.(1997)で示されたものと大きな相違はなかった.
石垣島側南方に位置する前弧海盆上凹地の最深部近傍では,上方細粒化する生物源石灰質の細粒砂~粗粒シルトとそれを覆う灰色の塊状粘土からなるタービダイトが採取された.一方,最深部から得られたコアの下部では,灰色の厚い塊状粘土層より下位に級化構造が不明瞭な生物源石灰質の極細粒~極粗粒砂が確認され,水中土石流のような形態による浅海域からの多量の粗粒物質供給イベントがあったことを示す.この凹地と南北性の高まりをもって西方に接する,台湾側から続く前弧海盆の最深部は,上方細粒化する粗粒シルトとそれを覆う塊状粘土に薄い生物擾乱を伴ったシルトが挟在する層相からなる.コアの中部以下は,3m以上の層厚をもつ灰色の厚い塊状粘土からなり,細粒タービダイトの上部を構成するものと考えられる.砕屑性粒子に富むことから,その給源は台湾である可能性が高い.
八重山諸島南方の琉球海溝底には,西から続く明瞭な海底チャネルが確認できる.自然堤防外側から得られたコアは,シルト質粘土中に薄層(数mm厚)の粗粒シルト~極細粒砂を非常に多数挟在する.これら粗粒層の粒子起源は,砕屑性粒子に富むことから台湾である可能性が高い.
Araoka, D., Y. Yokoyama, A. Suzuki, K. Goto, K. Miyagi, K. Miyazawa, H. Matsuzaki and H. Kawahata, 2013. Tsunami recurrence revealed by Porites coral boulders in the southern Ryukyu Islands, Japan. Geology 41, 919–922.
Ujiie, H., T. Nakamura, Y. Miyamoto, J.-O. Park, S. Hyun and T. Oyakawa, 1997. Holocene turbidite cores from the southern Ryukyu Trench slope: suggestions of periodic earthquakes. Jour. Geol. Soc. Japan 103, 590–603.
石垣島~西表島南方で,浅海からの海底谷が前弧海盆に達した付近には,石灰質の生物源を主とする砂質堆積物が分布し,これらの海底谷が主に生物源石灰質からなる粗粒物質の供給ルートであることを示唆する.前弧海盆に形成された海底扇状地上で採取されたピストンコア試料には,貝殻片やサンゴ片などの石灰質生物遺骸の破片を多く含む極細粒砂~中粒砂のタービダイトが挟在し,扇状地上では北側(扇頂部)に向かってタービダイトの粗粒化及び厚層化が確認された.しかし扇状地北東側(扇央部)と南西側(扇端部寄り)からの2本のコアについての年代測定結果から推定されるタービダイトの堆積間隔は,共にUjiie et al.(1997)で示されたものと大きな相違はなかった.
石垣島側南方に位置する前弧海盆上凹地の最深部近傍では,上方細粒化する生物源石灰質の細粒砂~粗粒シルトとそれを覆う灰色の塊状粘土からなるタービダイトが採取された.一方,最深部から得られたコアの下部では,灰色の厚い塊状粘土層より下位に級化構造が不明瞭な生物源石灰質の極細粒~極粗粒砂が確認され,水中土石流のような形態による浅海域からの多量の粗粒物質供給イベントがあったことを示す.この凹地と南北性の高まりをもって西方に接する,台湾側から続く前弧海盆の最深部は,上方細粒化する粗粒シルトとそれを覆う塊状粘土に薄い生物擾乱を伴ったシルトが挟在する層相からなる.コアの中部以下は,3m以上の層厚をもつ灰色の厚い塊状粘土からなり,細粒タービダイトの上部を構成するものと考えられる.砕屑性粒子に富むことから,その給源は台湾である可能性が高い.
八重山諸島南方の琉球海溝底には,西から続く明瞭な海底チャネルが確認できる.自然堤防外側から得られたコアは,シルト質粘土中に薄層(数mm厚)の粗粒シルト~極細粒砂を非常に多数挟在する.これら粗粒層の粒子起源は,砕屑性粒子に富むことから台湾である可能性が高い.
Araoka, D., Y. Yokoyama, A. Suzuki, K. Goto, K. Miyagi, K. Miyazawa, H. Matsuzaki and H. Kawahata, 2013. Tsunami recurrence revealed by Porites coral boulders in the southern Ryukyu Islands, Japan. Geology 41, 919–922.
Ujiie, H., T. Nakamura, Y. Miyamoto, J.-O. Park, S. Hyun and T. Oyakawa, 1997. Holocene turbidite cores from the southern Ryukyu Trench slope: suggestions of periodic earthquakes. Jour. Geol. Soc. Japan 103, 590–603.