日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG27] 環境問題の現場におけるScientistsとStakeholdersとの協働

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、木本 浩一(摂南大学・外国語学部)、手代木 功基(総合地球環境学研究所)

17:15 〜 18:30

[HCG27-P04] 乾燥地の砂漠化問題における外部者と地域住民の協働

*手代木 功基1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:砂漠化、アフリカ、フィールドワーク、地域住民

乾燥地域で問題となっている砂漠化は,その原因が主に人びとの暮らしを支える農耕や牧畜,薪炭採集などの日常的な生業活動にある点で解決が難しい課題である.そのため,1980年代から地球環境問題の中心的な課題として取り組まれてきたにも関わらず,その解決は依然として国際社会の急務となっている.
1990年代までの砂漠化対処の文脈においては,生態学における環境収容力や経済学における共有地の悲劇といった「科学的な知識」にもとづき,過放牧に代表される地域住民の過剰な資源利用が砂漠化の原因であると捉えられてきた.そして,これらの科学的知識にもとづく単純化されたシナリオに依拠して,乾燥地では牧草地の保全や牧畜民居住地域の開発が進められてきたが,その多くが成果をあげることはなかった.例えばアフリカ諸国では,放牧地の私有化や定住化政策,商業化の推進などといった計画が実施されてきたが,砂漠化問題の解決には進展がみられず,当該地域の住民の貧困問題などをさらに悪化させる事態を招いた.
砂漠化という環境問題を解決していくために,研究者が「科学的な知識」を究明するという営みは当然重要である.しかし,研究者・実務者がその成果の実社会への適用・応用を考えていく際に重視すべきなのは,自らの成果の正当性よりも,科学的知識に基づく計画の失敗が地域住民の生活に直結するという認識である.したがって砂漠化対処では,人びとの資源利用の実態を理解し,彼らの知識や生活感覚にもとづいた解決策を提示していくことが肝要である.
他方,研究者や実務者と当該地域の住民との関係性についても理解を深めていく必要がある.アフリカ諸国では,砂漠化対処に関わる様々なプロジェクトが乱立している.こうした中で,当事者である地元住民は研究者やNGO職員といった外部者が語る参加型や協働といった仕組みを「金づる」として利用するという事態も生じている.外部者への対応に慣れた人々が増加することによって,地域住民と問題認識を共有し,解決に向けて長期的に協働することに困難を伴う可能性も示唆される.
本発表では,乾燥地の砂漠化対処における外部者と地域住民の協働について概略を述べるとともに,発表者がアフリカにおける現地調査で経験したことを紹介することを通して協働にむけての課題を検討する.また,外部者と地域住民の立場・境遇が異なる場合が多い砂漠化問題と,他の環境問題との差異や共通性を議論することで,特に地域課題の解決に向けた当事者以外の外部者の関与のあり方について検討したい.