日本地球惑星科学連合2016年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] Natural hazards impacts on the society, economics and technological systems

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*PETROVA ELENA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

17:15 〜 18:30

[HDS06-P03] The Great East Japan Earthquake's Impact to Human Society as Described in Haiku

*青木 陽二1Koyama MiyakoIto Shunji2Jambor Kinuko3Shibata Kazuo (1.The open University of Japan、2.Haiku club Minato、3.Haiku International Association)

キーワード:haiku, effect of disaster, emotional damage

1.はじめに
2011年3月11日に起きたマグニチュード9.0の大地震は構造物の破壊や生命の損失だけでなく、人間社会に大きな影響を残した。その心理的影響は現在も続いている。気仙沼においては海岸の居住地の壊滅だけでなく、人々の心の支えも失ってしまった。豊かな海と自然と供に生きてきた者にとって、震災、津波は筆舌に尽くし難い深い悲しみと痛みを残した。一年、二年過ぎても深い傷を負ったままの人が多くいる。それでも焼け残った桜が咲いた時、魚市場再開で魚が水揚げされた時、ボランティアや被災者同志が絆を深めた時、被災地では遅々として進まぬ復興に苛立ちながらも、希望を持ち前進していく姿がある。震災復興で、多くの工事が始まり、完成にはまだ長い時間がかかる(写真)。現在の町の活気は、工事に依る人や車の流入により生じている。当然、大きな資金も投入されているが、何時まで続くので有ろう。投入資金は終われば、漁業と観光を中心とした日常生活を続けるのであろう。
俳人はその影響を記録すべく、被災地気仙沼において2012年7月29日に気仙沼海の俳句大会を実施し、国内外から1752句を集めた。また、2013年7月28日には1734句を集めた。多くのボランテイアの参加と募金により俳句大会は実施された。ここでは俳句に残された影響について述べる。
2.調査の方法
大会に集まった俳句には、震災によって作られた俳句が多く見られた。俳句は読んだ人により、それが震災の影響であるか否か、判断は別れる。また、俳句に関する知識に依っても理解能力が異なる。そこで、調査の協力が得られた被災地の人、被災地に住まない人に俳句を読ませ、震災俳句の数を数えた。
3.結果
2012年では、被災地の人は635句を選んだが、この句に対して、被災地外の人は123句を選ばなかった。一方、被災地以外の人は600句を選び、この句に対して被災地の人は94句を選ばなかった。このことは被災地の人と、それ以外の人では異なった句を多く選んだことを示し、被災地を知るかどうかで異なった結果を示した。また、多くの俳句が一人の人だけに選ばれた。これらは、被災地に対する知識の影響が俳句の選び方に影響していることを示している。2013年では、被災者は370句、被災地外は432句を選んだ。投句総数は大きな違いがないので、1年で震災俳句が少なくなったと言える。選ばれた俳句は多くは悲惨な出来事の記録であるが、中には鰹の水揚げのように人々がほっとするような俳句も見られた。
4.統計的分析
2012年から2013年にかけての震災俳句の減少は統計的に0.01水準で有意であった。また選ばれた人の数のどのレベルでも有意であった。
5.選ばれた個別の俳句
選句者によって選ばれる句は異なる。しかし10人以上に選ばれた句を震災俳句とする。2012年には109句が、2013年には28句が選ばれた。よってこの調査により、震災俳句が見出されたと言える。
6.結論
6.1震災によって作られたと思われる俳句は2012年には被災者には635句、被災地で無い人により600句が選ばれた。
6.2選句は被災地に関する知識に寄り異なる。
6.3多くの人が震災句と認める俳句が見つかった。