日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS17] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2016年5月24日(火) 15:30 〜 16:30 202 (2F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:渡壁 卓磨(京都大学理学研究科)

15:30 〜 15:45

[HDS17-07] ALOS-2/PALSAR-2データのInSAR解析による地すべり変動の検出

*鬼頭 雄也1平松 良浩1 (1.金沢大学)

キーワード:地すべり変動、だいち2号、干渉SAR解析、GNSS、能登半島

地すべりをはじめとする斜面変動の形態は多様であり,その移動特性を時空間的に把握することは斜面変動機構の解明やリスク評価を行う上で重要である。斜面変動のモニタリング手法には地表やボーリング孔に設置した計器を用いるものやGNSS測量等があるが,得られる移動量はあくまで計測地点の値であり,その空間分布を把握することはできない。InSAR(SAR Interferometry:干渉SAR解析)は同じ地域を観測した複数枚のSAR(synthetic aperture radar: 合成開口レーダー)データの位相差から,地表面の移動量を検出する技術である。もともとは地震,火山現象に伴う地殻変動の研究に用いられてきたが,近年では氷河,地すべり,地盤沈下等に伴う地表変動を検出するための有効な手段のひとつとなっている。
本研究では,InSAR解析により能登半島の石川県輪島市に位置する地すべり地を対象に斜面変動の検出を試み,地表のモニタリング結果と併せ地すべりの移動特性を分析した。SARデータは2014年5月に打上げられた人工衛星ALOS-2(だいち2号)に搭載されているPALSAR-2(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー)により2014年から2015年に撮像されたデータを用いた。地表のモニタリングデータはGNSSによる定点観測データ及び石川県により行われているボーリング孔を利用した地中伸縮計の観測データを用いた。
InSAR解析の結果,2015年4月22日と2015年7月15日の撮像データから作成した干渉画像から約300 m×500 mの空間領域で最大4cm/月の変位が検出され,変位が検出された範囲,変位量,移動方向は地表のモニタリング結果と調和的であった。また,2014年10月8日と2015年4月22日の撮像データから作成した干渉画像では,ほぼ同様の領域内で著しく干渉性が低下していることから,検出が困難なほど大きな変動が生じたことが示唆される。本発表では,地表のモニタリングやInSARにより得た地すべり変動と降雨との関係を考察し,時空間的な地すべり変動について議論する。
謝辞:本研究で用いたPALSAR-2データはPIXELにおいて共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学地震研究所との共同研究契約によりJAXAから提供されたものである。PALSAR-2データの所有権は経済産業省及びJAXAにある。なお,InSAR解析は防災科学技術研究所の小澤拓氏により開発されたRINC,干渉画像の処理過程において国土地理院の10mDEMを使用させて頂いた。結果の描画はGMT及びQGISを用いた。ここに記してお礼申し上げます。