日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS17] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2016年5月24日(火) 15:30 〜 16:30 202 (2F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:渡壁 卓磨(京都大学理学研究科)

16:15 〜 16:30

[HDS17-10] 降雨浸透–斜面安定カップリングモデルによる表層崩壊発生過程の復元:2014年広島豪雨災害を例に

*渡壁 卓磨1松四 雄騎2千木良 雅弘2 (1.京都大学理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:表層崩壊、ロックコントロール、土層構造、降雨浸透、斜面安定解析

本研究では,2014年8月20日に表層崩壊による災害の発生した広島県広島市の花崗岩と変成岩を基盤とする斜面の土層構造について明らかにし,水文観測によって降雨に対する間隙水圧の変動を調べた.そのうえで,降雨浸透モデルと斜面安定解析を組み合わせることで表層崩壊の発生過程を復元し,実際の発災時刻や崩壊形状に照らして検証を行った.花崗岩斜面におけるすべり面は力学的強度がわずかに増大する深度に形成され,変成岩斜面のすべり面は透水係数が急激に小さくなる深度の近傍に位置している.崩壊した土層の厚さと斜面の傾斜角は,災害発生前後の航空レーザー測量データから求めた.すべり面付近の土層のせん断強度定数は,不攪乱試料を用いた一面せん断試験によって決定した.花崗岩斜面の潜在すべり面における間隙水圧は,先行降雨が十分にあり土層が湿潤な条件下では,速やかに上昇した.一方,変成岩斜面では,浅部の間隙水圧は速やかに上昇し,潜在すべり面よりも上部で時折宙水が発生するが,深部の間隙水圧は緩やかに上昇し,かつそれは降雨ピークから数時間以降に観測される.これらの結果をもとに,間隙水圧の変動特性についてモデリングし,発災時の降雨波形を入力として,表層崩壊を引き起こした間隙水圧の変動を復元する.この降雨浸透モデルと斜面安定解析を組み合わせ,発災時の斜面の不安定化をシミュレートし,実際に表層崩壊した斜面の傾斜と崩壊深および崩壊発生のタイミングのデータを用いて検証を行う.