日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS17] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

17:15 〜 18:30

[HDS17-P05] 同一流域における異なる時期の深層崩壊面積の頻度分布

*中野 真帆1西口 幸希1内田 太郎2田中 健貴2 (1.(株)建設技術研究所、2.国土技術政策総合研究所)

キーワード:深層崩壊、崩壊面積、岩盤クリープ、LP データ、空中写真

深層崩壊は土石流や、天然ダム形成・決壊を引き起こし、下流に被害を及ぼすことがある。深層崩壊の被害を軽減するためには、ある地域でどの程度の規模の深層崩壊が発生するのかを予測する必要がある。
そこで、本研究では、深層崩壊の規模は地形・地質条件の影響を受けると考え、「ある地域で発生する深層崩壊の規模は、同地域で過去に起こったものと同程度になる可能性が高い」という仮説を、山梨県富士川流域および奈良県十津川流域を対象に検証した。まず空中写真判読による深層崩壊跡地の判読図をベースに、既往の文献や複数時期の空中写真を用いて、各深層崩壊の発生時期を推定した。その上で、異なる3時期に発生した深層崩壊の崩壊面積の頻度分布を求め、その関係性についての検討を行った。また、LPデータを元に傾斜量区分図を作成し、岩盤クリープの判読を行い、岩盤クリープの面積と頻度の関係もあわせて検討した。
その結果、富士川流域では、1982年の崩壊地はその他全時期の時期に比べてやや小さい崩壊の頻度が高いものの,1948年とその他の時期は比較的類似した頻度分布を示した。十津川流域では、1911年時点全崩壊地と2011年に発生した崩壊面積の頻度分布を比較すると,両者は概ね同様の傾向であった。
また、富士川・十津川両地域ともに、富士川の1982年以外の崩壊地と岩盤クリープの規模の頻度分布は、概ね一致した。この結果は,岩盤クリープが深層崩壊に至る前兆的な地盤の変形であるとするこれまでの研究とあわせて考えると,岩盤の緩みの段階から地質、地形等に規制され,深層崩壊規模がある程度決まっている可能性が示唆され,「深層崩壊発生誘因に拠らず,深層崩壊の規模は地形・地質条件の影響を受ける」とした仮定を支持するものであると考えられる。
以上のことは,ある地域で今後発生する深層崩壊の規模は,同一流域で過去に発生した崩壊規模からある程度、推定可能であること示唆している。