日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS19] 津波とその予測

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 201A (2F)

コンビーナ:*行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:柳澤 英明(東北学院大学教養学部地域構想学科)、寺田 幸博(高知工業高等専門学校環境都市デザイン工学科)

16:45 〜 17:00

[HDS19-24] GPS津波計データ伝送用衛星通信アンテナ設置機構の改良

*寺田 幸博1山本 伸一2岩切 直彦2岩崎 匡宏3越川 尚清3多田 光男4和田 晃5加藤 照之6 (1.高知工業高等専門学校、2.情報通信研究機構、3.宇宙航空研究開発機構、4.弓削商船高等専門学校、5.日立造船株式会社、6.東京大学地震研究所)

キーワード:GPS津波計、技術試験衛星Ⅷ型、衛星通信

東北地方太平洋沖地震津波において,釜石沖に設置されていたGPS波浪計(国交省ナウファス)は第1波の波高6.7mを表示した後,発信が途絶えた.これは,停電によるインターネット網の寸断のため,陸上基地局からサーバーまでの間のデータ伝送ができなかったためである.これに対して,技術試験衛星(ETS-Ⅷ)による衛星通信の有効性を実験的に確認してきた.
津波計ブイに搭載した装置が使用する電力はバッテリと太陽電池から供給される.このため,搭載するブイ上の地球局も消費電力を低く抑え,アンテナは追尾が不要な無指向性アンテナを用いる必要がある.これまでの衛星通信実験において,ブイから基地局への回線では,ブイの動揺による衛星方向のアンテナ利得の変動がデータ伝送の品質に影響を与えることが明らかになった.この変動を小さくするためのアンテナ設置機構を試作し,船舶を用いてその効果を検証した.
試作したアンテナ設置機構は,アンテナをジンバル機構上に取付け,ブイの動揺による傾きを機構的に補償でき,取り付けたアンテナを概ね水平に保つことができる構造である.アンテナはS帯の小型平面アンテナ(直径84mm,高さ14.8mm,重量150g)である.実験ではジンバル機構に取り付けたアンテナを,弓削商船高専の練習船(弓削丸 240t )に設置し,技術試験衛星( ETS-VIII ) から送信される信号を船で受信してその受信電力を記録した.また,比較のために同型のアンテナを固定して設置した場合のデータも同時に取得し,その効果を検証した.
船の動揺による受信電力の変動の測定では,固定のものと比較して受信電力の変動の幅が小さくなる結果が得られた.ブイに設置する地球局は堅牢,小型軽量,低消費電力など多くの制約がある.このため衛星回線は十分な回線マージンを得ることが難しく,ブイの動揺による信号のレベル変動程度でも回線品質に影響を与える.試作したアンテナ設置機構は重りによってアンテナを概ね水平に維持する簡単なものであるが,その効果を確認することができた.
本実験は東京大学地震研究所所長裁量経費で実施した.また,弓削商船高専の弓削丸関係者による実験サポートを受けたことを記し,謝意を表します.