17:15 〜 18:30
[HDS19-P13] 南海トラフを対象とした確率論的津波ハザード評価のための津波予測解析
キーワード:津波ハザード評価、津波解析、南海トラフ、データベース
防災科研は、日本全国の沿岸において想定される津波ハザードの確率論的な評価を行うための手法の検討を平成24年度から着手した(藤原・他、2013、JpGU)。全国をいくつかの地域に分け、それぞれの地域の沿岸全域の津波高さ(ハザード)を、日本周辺海域で津波波源となる可能性のある全ての地震を対象に津波予測計算し、確率論的に評価するものである(平田・他、2015、JpGU)。本研究では、南海トラフ沿いで発生する地震を対象に津波予測解析を実施し、鹿児島から千葉県までの沿岸での解析結果を整備したデータセットについて紹介する。
考慮する地震は津波を起こし得る地震を対象にしているため、海溝から沈み込むプレートの境界やその近くで発生する地震を主に扱うこととした。海域活断層についてはその正確な位置や過去の地震活動が調べられていないものが多いため現在別途検討中であり対象外とした。プレート境界やその近くで発生する海溝型の大地震に加え、プレート境界近傍で発生すると考えられる巨大地震や、震源の特定が困難な中小地震も対象とした。南海トラフ沿いの断層の種類は、長期評価で例示された南海トラフの地震をトラフ軸方向に6つ、プレート沈み込み方向に3つの計18領域に分割し、その組み合わせから想定震源域を、東海地域と南海地域のプレート境界が同時破壊する場合と、東海地域と南海地域に2つの地震が時間差を置いて発生する場合の15種類に分類した。その15種類の想定震源域に対し1442個の特性化波源断層モデルを設定した(遠山・他、2015、JpGU;平田・他、2015、地震学会)。その内訳は、①基本モデルの地震として、既往研究に基づき過去に起きた大地震の大すべり域の位置・形状を参照した24個、②拡張モデルの地震として、既往研究から推定される大すべり域以外の大すべり域を様々な位置に配置することで、すべり分布の多様性を考慮した1411個、③再現モデルの地震として、長期評価された地震のうち、宝永地震タイプ3個、南海地震タイプ2個と東南海地震タイプ2個である。また、15種類の想定震源域以外の70種類の震源域に対し2455個の拡張モデルも設定した。
これら3897波源を使い津波予測解析を実施した。震源域から沿岸域までを一括して計算するため、外洋から陸域に近づくほど細かい格子間隔となるように計算領域を細分化し、各計算領域の格子間隔を外洋部から順に1350m、450m、150m、50mで接続した。津波伝播解析の支配方程式として海底摩擦及び移流を考慮した二次元非線形長波理論式を考え、Staggered grid, Leap-frog差分法で解いた。境界条件としては、海域では完全無反射の透過境界を、陸域では遡上を考慮した。初期水位は、鉛直方向と水平方向の地殻変動成分を考慮し計算し、海底地盤変動量はOkada(1992)を用いて計算した。
このように実施した予測解析結果を、沿岸の最大津波水位のデータセットとして整備する。これらのデータセットは、不確実性の見積もりや不確実性を考慮した沿岸の津波ハザード評価の検討(阿部・他、2015、JpGU)で利用されるなど、確率論的な基礎研究などへ貢献できる。今後、幅広い利用促進に向けたデータベースの検討などにも取り組む。
本研究は、防災科研の研究プロジェクト「全国を対象とした津波ハザード評価」の一環として実施した。
考慮する地震は津波を起こし得る地震を対象にしているため、海溝から沈み込むプレートの境界やその近くで発生する地震を主に扱うこととした。海域活断層についてはその正確な位置や過去の地震活動が調べられていないものが多いため現在別途検討中であり対象外とした。プレート境界やその近くで発生する海溝型の大地震に加え、プレート境界近傍で発生すると考えられる巨大地震や、震源の特定が困難な中小地震も対象とした。南海トラフ沿いの断層の種類は、長期評価で例示された南海トラフの地震をトラフ軸方向に6つ、プレート沈み込み方向に3つの計18領域に分割し、その組み合わせから想定震源域を、東海地域と南海地域のプレート境界が同時破壊する場合と、東海地域と南海地域に2つの地震が時間差を置いて発生する場合の15種類に分類した。その15種類の想定震源域に対し1442個の特性化波源断層モデルを設定した(遠山・他、2015、JpGU;平田・他、2015、地震学会)。その内訳は、①基本モデルの地震として、既往研究に基づき過去に起きた大地震の大すべり域の位置・形状を参照した24個、②拡張モデルの地震として、既往研究から推定される大すべり域以外の大すべり域を様々な位置に配置することで、すべり分布の多様性を考慮した1411個、③再現モデルの地震として、長期評価された地震のうち、宝永地震タイプ3個、南海地震タイプ2個と東南海地震タイプ2個である。また、15種類の想定震源域以外の70種類の震源域に対し2455個の拡張モデルも設定した。
これら3897波源を使い津波予測解析を実施した。震源域から沿岸域までを一括して計算するため、外洋から陸域に近づくほど細かい格子間隔となるように計算領域を細分化し、各計算領域の格子間隔を外洋部から順に1350m、450m、150m、50mで接続した。津波伝播解析の支配方程式として海底摩擦及び移流を考慮した二次元非線形長波理論式を考え、Staggered grid, Leap-frog差分法で解いた。境界条件としては、海域では完全無反射の透過境界を、陸域では遡上を考慮した。初期水位は、鉛直方向と水平方向の地殻変動成分を考慮し計算し、海底地盤変動量はOkada(1992)を用いて計算した。
このように実施した予測解析結果を、沿岸の最大津波水位のデータセットとして整備する。これらのデータセットは、不確実性の見積もりや不確実性を考慮した沿岸の津波ハザード評価の検討(阿部・他、2015、JpGU)で利用されるなど、確率論的な基礎研究などへ貢献できる。今後、幅広い利用促進に向けたデータベースの検討などにも取り組む。
本研究は、防災科研の研究プロジェクト「全国を対象とした津波ハザード評価」の一環として実施した。