日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS19] 津波とその予測

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[HDS19-P14] 波源断層モデルの多様性を考慮した南海トラフの確率論的津波ハザード評価

*阿部 雄太1是永 眞理子1秋山 伸一1松山 尚典2村田 泰洋3平田 賢治4藤原 広行4 (1.伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、2.応用地質株式会社、3.国際航業株式会社、4.防災科学技術研究所)

キーワード:津波ハザード評価、確率、南海トラフ、長期評価、津波解析

防災科研において2012年度から開始した全国を対象とする津波ハザード評価業務「全国津波ハザード評価」の一環として、将来南海トラフ沿いで発生すると考えられる地震について、震源の多様性などの様々な不確実さを考慮した上で津波の危険性を定量的に評価するため、確率論的津波ハザード評価を実施した。
従来の南海トラフの地震の長期評価では、「ほぼ同じ領域で同様の規模の地震が繰り返し発生する」という固有地震モデルに基づいて評価されてきたが、2011年東北地方太平洋沖地震の発生を機に、地震調査委員会(2013)は発生し得る最大クラスも含めた地震の多様性を考慮した評価に改めた。同委員会は南海トラフの震源域をトラフ軸と平行方向に6つのセグメントに分けた上で、セグメント間の連動を考慮して15種類の想定震源域を例示している。我々はこれまでに、15種類の想定震源域に対してそれぞれすべり不均質パターンの異なる複数個の波源断層モデルを設定し(遠山ほか, 2015)、数値計算によって沿岸での最大津波水位を求め、これに発生確率を設定して津波ハザード評価を実施した(平田ほか, 2015、是永ほか, 2015)。
同委員会の想定震源域は過去に南海トラフで発生した地震の震源域を元に例示されたものであるが、同委員会も認めているとおり、次の南海トラフの地震は例示された15種類の想定震源域とは異なるパターンで発生することも考えられる。すなわち、過去に発生が確認されていないような震源域パターンの地震も評価に含める必要がある。そこで、本研究では15種類の想定震源域に加えて70種類の震源域を新たに設定し確率論的津波ハザード評価を実施した。その結果、震源域の組み合わせの総数は85パターン、波源断層モデルは合計3928個となった。
各波源断層モデルで表される地震に対する重み設定方針は、まず15種類の想定震源域に対して、全国地震動予測地図2014年版(地震調査委員会,2014)における重み分配の考え方と同様に、過去に発生した地震を参照して重みを設定した。次に、想定震源域以外の地震の中で東西方向の連動領域数が3連動以上のものを、想定震源域の地震の一部と見なして重みを分配した。東西方向の連動領域数が2連動以下のものは、震源を予め特定するのが困難な地震として、GR則に基づいて発生確率を与えた。
最後に、評価結果の空間的な分布を得るため、全沿岸地点で津波高さのハザードカーブを計算し、ハザードカーブから30年超過確率の値を参照して沿岸最大津波水位の値を求め、ハザードマップを作成した。参照する30年超過確率の値としては、是永(2015)と同様の試みとして、南海トラフで発生する地震の30年発生確率を100%とした場合の50.0%、15.87%、2.28%に相当する値を選択した。これらの値は、南海トラフの地震による最大津波水位の条件付き確率密度分布が対数正規分布に従うと仮定した場合に、それぞれ対数正規分布の平均値、平均値+1σ、平均値+2σに相当する値である。