17:15 〜 18:30
[HGG12-P03] 平成27年9月関東・東北豪雨災害における災害対応地図の作成と活用
キーワード:平成27年9月関東・東北豪雨、災害対応地図、常総市、SfM-MVS
(1) 動機:
平成27年9月9日から11日にかけて続いた豪雨により、関東地方および東北地方の広い範囲で河川の越水や土砂災害が発生した。特に茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊し、広範囲で浸水被害が生じた。決壊箇所付近では濁流により家屋が流失し、浸水地域では多数の住民が家屋に取り残された。そのような状況が報じられる中、9月10日の正午過ぎに、水難要救助者の捜索救助や自治体による災害対応を支援するため、被災状況を詳細に把握するための地図の作成が必要になると判断した。
(2) 手法:
地図作成には空撮画像のSfM-MVS(Structure from Motion and Multi-view Stereo)解析によるオルソモザイク画像を用いることとした。被災地での空撮は機動性の高い無人航空機を選択するケースが多いが、今回は被災エリアが100km2と広大であるため、有人ヘリコプターから市販のデジタルカメラを用いて実施した。飛行高度は海抜高度1,200mとし、写真のオーバーラップが約75%となるよう、飛行コースと速度を上空で指定した。
(3) 結果:
平成27年9月11日15:30〜16:30に高度1,200mから約600枚の斜め写真を撮影し、浸水域約100km2のオルソモザイク画像を作成した。撮影後12時間以内に、地上解像度21cm/画素のオルソモザイク画像、上空からの写真および地上での調査データと合わせて、防災科研の災害対応Webサイトで公開した。作成した災害対応地図等のリソースはクリエイティブコモンズライセンス「CC-BY 4.0 国際」で公開した。その後、9月15日までに株式会社ゼンリンの住宅地図をオーバーレイした災害対応地図を作成し、災害対策本部に提供した。また同日、民間の捜索救助の専門チーム(JFFS)およびNPO法人日本救助犬協会とともに災害対応図から水難要救助者の分布を推定し、捜索活動の支援を行った。
(4) 考察:
災害後は各機関より多様な情報が発表されるが、その利活用には著作権等の壁があり、災害後の多忙な局面でのスムーズな利用が難しく、活用されないことが多い。今回は、災害対応地図等の情報リソースをオープンデータとして公開したことにより、利用者は面倒な申請無しに情報を利用できた。災害対策本部、ボランティアセンター、大学の調査団等に利用された。災害現場の高精細なオルソモザイク画像は、災害の被災状況を把握する手段として有用であった。しかし、利用者が地図を活用した意思決定に慣れていない場合、これらの地図リソースを有効に活用することが難しいようであった。自治体等に地図情報等を提供する場合は、その使用方法を含めて災害対応現場を支援する必要がある。今回は有人航空機から撮影を行ったが、30分間で14機以上の救助・報道ヘリ等が地表付近で活動している様子が視界に入った。無人航空機の災害時の活用が期待されているが、今回のように過密に有人航空機が活動する空域では無人航空機を安全に運航することは困難である。有人航空機と無人航空機が安全に空域を共存できるよう、災害時の運航制度を検討する必要がある。
平成27年9月9日から11日にかけて続いた豪雨により、関東地方および東北地方の広い範囲で河川の越水や土砂災害が発生した。特に茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊し、広範囲で浸水被害が生じた。決壊箇所付近では濁流により家屋が流失し、浸水地域では多数の住民が家屋に取り残された。そのような状況が報じられる中、9月10日の正午過ぎに、水難要救助者の捜索救助や自治体による災害対応を支援するため、被災状況を詳細に把握するための地図の作成が必要になると判断した。
(2) 手法:
地図作成には空撮画像のSfM-MVS(Structure from Motion and Multi-view Stereo)解析によるオルソモザイク画像を用いることとした。被災地での空撮は機動性の高い無人航空機を選択するケースが多いが、今回は被災エリアが100km2と広大であるため、有人ヘリコプターから市販のデジタルカメラを用いて実施した。飛行高度は海抜高度1,200mとし、写真のオーバーラップが約75%となるよう、飛行コースと速度を上空で指定した。
(3) 結果:
平成27年9月11日15:30〜16:30に高度1,200mから約600枚の斜め写真を撮影し、浸水域約100km2のオルソモザイク画像を作成した。撮影後12時間以内に、地上解像度21cm/画素のオルソモザイク画像、上空からの写真および地上での調査データと合わせて、防災科研の災害対応Webサイトで公開した。作成した災害対応地図等のリソースはクリエイティブコモンズライセンス「CC-BY 4.0 国際」で公開した。その後、9月15日までに株式会社ゼンリンの住宅地図をオーバーレイした災害対応地図を作成し、災害対策本部に提供した。また同日、民間の捜索救助の専門チーム(JFFS)およびNPO法人日本救助犬協会とともに災害対応図から水難要救助者の分布を推定し、捜索活動の支援を行った。
(4) 考察:
災害後は各機関より多様な情報が発表されるが、その利活用には著作権等の壁があり、災害後の多忙な局面でのスムーズな利用が難しく、活用されないことが多い。今回は、災害対応地図等の情報リソースをオープンデータとして公開したことにより、利用者は面倒な申請無しに情報を利用できた。災害対策本部、ボランティアセンター、大学の調査団等に利用された。災害現場の高精細なオルソモザイク画像は、災害の被災状況を把握する手段として有用であった。しかし、利用者が地図を活用した意思決定に慣れていない場合、これらの地図リソースを有効に活用することが難しいようであった。自治体等に地図情報等を提供する場合は、その使用方法を含めて災害対応現場を支援する必要がある。今回は有人航空機から撮影を行ったが、30分間で14機以上の救助・報道ヘリ等が地表付近で活動している様子が視界に入った。無人航空機の災害時の活用が期待されているが、今回のように過密に有人航空機が活動する空域では無人航空機を安全に運航することは困難である。有人航空機と無人航空機が安全に空域を共存できるよう、災害時の運航制度を検討する必要がある。