日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG13] 自然資源・環境の利用と管理

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)

17:15 〜 18:30

[HGG13-P04] 中国内モンゴル呼倫湖国家級自然保護区における水系現状と保護政策

*韓 国栄1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院園芸学研究科)

キーワード:自然保護区、水系、保護、政策

1.はじめに
湖、河川は草原景観を構成する重要な要素である。また,水系における歴史的変遷と利用形態の変化は生態系と地域住民の生業に影響を及ぼす。特に,自然保護区における水系の保護政策は地域住民への制限が多い。本研究では呼倫湖国家級自然保護区を対象地域として,水系現状と水系保護のための政策及び利用制限を把握することを目的とした。
2.研究方法
本研究では,中国内モンゴルに位置する呼倫湖国家級自然保護区を対象地として,2016年1月から2016年2月中旬に文献調査と現地調査を実施した。
3.結果と考察
1) 水系現状
自然保護区内の呼倫湖水系はエルグナ水系に属する。水系に呼倫湖、ボイル湖、ウラン湖とアルグン川、ケロロン河や烏爾遜河など80条の河川がある。呼倫湖国家級自然保護区内の水系総流域面積3,721,400ha,自然保護区の44%の面積を占める。2000年以来,蒙古高原及びフロンボイル草原の連続乾燥, ケロロン河や烏爾遜河等重要支流の補充量の不足により,呼倫湖水位は持続下降してきた。2003年に呼倫湖水位は歴史最高水位より2.12m下降し,歴史最低水位になった。2013年から、呼倫湖は回復始め、水位は10年以来の下降傾向を変えて1.36メートル上昇した。2013年6月の測量データをよると、呼倫湖水位は504.37メートルになり、水域面積は2006年の面積に回復して,1927平方キロに達し,鳥類、魚類の繁殖地は回復しはじめた。
2)水系保護のための政策及び利用制限
2014年から呼倫湖管理部門より「呼倫湖2014年――2018年の部分休漁措置実施方案」を実施した。方案実施期間は,2014年4月11日から2018年2月31日 までである。期限中の例年禁漁範囲は呼倫湖国家級自然保護区核心区、烏爾遜河、ケロロン河(中国国内部分)、烏蘭湖など天然水域魚類産卵場と回遊川筋である。禁漁区以外の漁業水域の禁漁期間は毎年5月1日から7月31日までである。
また,呼倫湖水系を保護するために,2002年から生態移民プログラムを始めた。呼倫湖周辺からシンバルフ右旗の移民村へ280世帯が移住した。住民は元の放牧や漁業生活から定住生活することになった。
4.おわりに
本研究では呼倫湖国家級自然保護区を対象地域として、水系現状と水系保護のための政策及び利用制限、を把握した。これらの研究から呼倫湖国家級自然保護区の水系利用による保護地域の管理強化を図り、地域連携を促進する草原管理システムを構築するに役立つと考えられる。