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[HGM14-01] 北潟湖の湖沼堆積物を用いた津波災害調査
キーワード:津波、湖沼堆積物、珪藻
2011年に発生した東日本大震災での津波災害を機に、日本海側沿岸地域でも津波災害に対する警戒意識が高まった。過去の歴史文献記録を見ると、日本海側沿岸地域でも秋田・青森沖を中心に多くの大規模津波が発生した記録があり、大規模津波災害の発生を否定することはできない。そこで本研究では福井県にある北潟湖の湖沼堆積物を用い日本海側、特に北陸地域で過去に発生したとされる、津波災害の痕跡の調査を行った。北潟湖は日本海と接続する部分がある汽水湖であり、津波が発生した場合、この接続部から遡上してくることが考えられる。調査の結果、海から約2㎞地点にあるコア(KT14-5)の深さ170~203㎝付近から、津波堆積物と思われる層を確認した。物理量分析結果では、鉱物粒子径の粗粒化や炭酸カルシウム量の増加、有機物量や含水率の減少が示された。また別のコアの対比できる層準からは海から運ばれた異地性の貝が発見された。更に珪藻分析を行ったところ、海水種と汽水種が珪藻全体の約70%を占めることがわかった。この層の下30㎝で同様の珪藻分析を行った結果では、淡水種が珪藻種全体の約60%を占めており、この層が海起源であることがより明確に示された。この層から発見された貝殻の14C年代測定結果(196㎝)は、1404-1474 cal ADとなった。この地域で過去に発生した津波記録の一つに1586年の天正津波がある。この津波記録は、ルイス・フロイス著書の「日本史」や、吉田兼見の著書「兼見卿記」に記載が残され、巨大な波が陸に押し寄せたことを示す。しかし、この津波による堆積学的な痕跡は、若狭湾地域を中心に多くの調査が行われているものの、正式な発見にまで至っていない。また天正地震と関連付けられる事が多いが詳細は不明である。本研究で得られた津波堆積層の年代はそれ天正津波の年代よりもやや古く、別の津波である可能性もある。本研究で行ったような取り組みをさらに多くの地点で実施することにより,日本海側の過去の津波の規模の評価につなげたい。