09:15 〜 09:30
[HGM14-02] 火星・南極露岩地域での塩類風化に関する室内実験
キーワード:塩類風化、湿度、タフォニ、南極、火星
火星や南極露岩地域のような寒冷乾燥地域には,露岩に発達したタフォニや,土壌表面を覆う小角礫などの物理風化による生成物が多くみられる.これらの地域では,液体の水がほとんど存在せず,水分の供給源は大気中の水蒸気や霧,風雪などに限られる.このような環境下では,多量の水を必要とする化学風化や凍結による破砕は起こりにくい.その一方で,土壌には大量の塩類が集積しており,塩類風化が起きている可能性が指摘されている.本研究では,塩類を含ませた岩石試料を恒温恒湿庫内に設置して,湿度変化による塩類風化実験を行った.
実験には,各辺5 cmの立方体に整形した大谷凝灰岩と青島砂岩を用いた.また,塩類として,塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウムを使用した.はじめに,試料を3種類の塩の10°C飽和溶液に72時間浸したのち,乾燥炉で110°C,48時間乾燥させ,試料間隙内に塩類を析出させた.次に,塩類の析出によって生じた応力,ひずみ取り除くため,およそ1ヵ月間,試料をデジケータ内に保管した.その後,試料を恒温恒湿庫内に設置し,風化実験を行った.庫内を10℃に保った状態で,湿度を20~100 %RHの範囲,6時間周期で変化させ,20サイクルごとに試料の重量,弾性波伝搬速度,エコーチップ反発値を測定した.さらに,試料表面に一軸歪みゲージを,試料表面から0.5 cmと2.5 cmの深さに熱電対をそれぞれ設置して,試料のひずみと温度を1分おきに測定した.
大谷石を用いた実験の結果,湿度変化による塩類風化が生じ,最大2 mm程度の小片が試料表面から剥離した.重量減少は塩化ナトリウムを含む試料でもっとも著しく,次いで,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウムを含む試料の順であった.また,塩化ナトリウムを含む試料では,実験の進行に伴ってエコーチップ反発値が低下し,試料表面の強度低下が起きた.一方,弾性波伝搬速度はどの試料でもほとんど変化せず,湿度変化による塩類風化は試料表面でのみ起きることが示された.庫内の湿度が高くなる際には試料の温度が上昇し,湿度が低下する際には試料の温度が低下した.温度の変化は,塩化ナトリウムを含む試料でもっとも大きく,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウムを含む試料,塩を含まない試料の温度変化は同程度であった.加湿時の水蒸気の凝結による塩類の溶解,乾燥に伴う再結晶によって,潜熱が生じ,試料の温度が変化したと考えられる.とくに,塩化ナトリウムは強い潮解性を示すため,試料表面に付着する水が他の試料よりも多く,温度変化がもっとも大きくなったと考えられる.本研究で生じた小片の剥離は,岩盤表面やタフォニ内壁でみられる,”granular disintegration”と呼ばれる小片の剥離とよく似ていた.南極露岩地域や火星にみられるタフォニの表面には,硫酸マグネシウムや硫酸カルシウムなどの塩類が析出してることが多い.とくに硫酸カルシウムは潮解性を示すことが知られており,本研究で用いた塩化ナトリウムと同様に,大気中の湿度変化によって,活発な塩類風化を引き起こしうる.したがって,これらのタフォニは,湿度変化による塩類風化によって形成された可能性がある.
実験には,各辺5 cmの立方体に整形した大谷凝灰岩と青島砂岩を用いた.また,塩類として,塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウムを使用した.はじめに,試料を3種類の塩の10°C飽和溶液に72時間浸したのち,乾燥炉で110°C,48時間乾燥させ,試料間隙内に塩類を析出させた.次に,塩類の析出によって生じた応力,ひずみ取り除くため,およそ1ヵ月間,試料をデジケータ内に保管した.その後,試料を恒温恒湿庫内に設置し,風化実験を行った.庫内を10℃に保った状態で,湿度を20~100 %RHの範囲,6時間周期で変化させ,20サイクルごとに試料の重量,弾性波伝搬速度,エコーチップ反発値を測定した.さらに,試料表面に一軸歪みゲージを,試料表面から0.5 cmと2.5 cmの深さに熱電対をそれぞれ設置して,試料のひずみと温度を1分おきに測定した.
大谷石を用いた実験の結果,湿度変化による塩類風化が生じ,最大2 mm程度の小片が試料表面から剥離した.重量減少は塩化ナトリウムを含む試料でもっとも著しく,次いで,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウムを含む試料の順であった.また,塩化ナトリウムを含む試料では,実験の進行に伴ってエコーチップ反発値が低下し,試料表面の強度低下が起きた.一方,弾性波伝搬速度はどの試料でもほとんど変化せず,湿度変化による塩類風化は試料表面でのみ起きることが示された.庫内の湿度が高くなる際には試料の温度が上昇し,湿度が低下する際には試料の温度が低下した.温度の変化は,塩化ナトリウムを含む試料でもっとも大きく,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウムを含む試料,塩を含まない試料の温度変化は同程度であった.加湿時の水蒸気の凝結による塩類の溶解,乾燥に伴う再結晶によって,潜熱が生じ,試料の温度が変化したと考えられる.とくに,塩化ナトリウムは強い潮解性を示すため,試料表面に付着する水が他の試料よりも多く,温度変化がもっとも大きくなったと考えられる.本研究で生じた小片の剥離は,岩盤表面やタフォニ内壁でみられる,”granular disintegration”と呼ばれる小片の剥離とよく似ていた.南極露岩地域や火星にみられるタフォニの表面には,硫酸マグネシウムや硫酸カルシウムなどの塩類が析出してることが多い.とくに硫酸カルシウムは潮解性を示すことが知られており,本研究で用いた塩化ナトリウムと同様に,大気中の湿度変化によって,活発な塩類風化を引き起こしうる.したがって,これらのタフォニは,湿度変化による塩類風化によって形成された可能性がある.