日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM14] 地形

2016年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 301B (3F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:佐藤 浩(日本大学文理学部)

11:45 〜 12:00

[HGM14-11] 実験侵食地形の発達における堆積域幅の影響

*大内 俊二1 (1.中央大学理工学部)

キーワード:降雨侵食実験      、堆積域の幅、扇状地発達、流水侵食、斜面崩壊、隆起速度

隆起と降雨侵食によるこれまでの実験地形の発達実験の中から、他の条件が類似で堆積域幅の異なる実験を比較することによって、60×60cmの四角い隆起域を囲む堆積域の広さが実験侵食地形の発達に与える影響について考察する。比較したrunの概要は以下のとおりである。平均降雨量はどのrunも80~90mm/hで、侵食と隆起による地形発達は**Ouchi (2015) の言うsteady state phaseに入る。
.......堆積域幅 ......隆起時間 ......透水係数 ......隆起速度
run27 ...10cm .........960h ..........2.94cm/s ....0.36mm/h
run32 ...20cm..........1000h .........1.84cm/s.... 0.36mm/h
run30 ...10cm .........1160h .........2.99cm/s ....0.1mm/h
run31 ...20cm .........1160h .........4.68cm/s.... 0.1mm/h
実験地形は、隆起とともにまず表面流による侵食が進み、谷系(流域)が発達して行く。同時に堆積域では、流路が移動を繰り返して堆積の場を変えながら扇状地を発達させる。実験終了後の堆積断面の観察からは勾配をほぼ一定に保ったまま扇状地が少しずつ前進した様子が分かる。扇状地が堆積域の端まで達し堆積域をほぼ埋めるようになると、堆積域は運搬物質の通過域となり、表面流による隆起域の侵食がそれまでより急速に進むことが観察された。比高がある程度増大して斜面が広がりだすと、斜面崩壊が頻繁に起こるようになって、流水の働きは斜面崩壊によって生産された物質を域外に搬出することが中心となる。それまで隆起とともに上昇してきた隆起域の平均高度は、このあたりからほぼ一定の高さで安定するような変化を見せる。堆積域の幅が広ければ扇状地発達の時間が長く、この間の隆起によって隆起域の平均高度がより上昇するし、流水の侵食による谷の発達も遅いため崩壊するような斜面の拡大発達も遅れがちで、隆起域の平均高度は堆積域の幅が狭い場合よりも高いところで安定する傾向があった。実験の後半、斜面崩壊が盛んに起こり平均高度が安定するころには水路勾配も安定するが、堆積域の幅が広い場合に縦断形がその分長くなり扇頂部がより高くなることを除けば、水路縦断形自体は堆積域の幅にかかわらず類似の形態となった。安定する水路勾配は砂山構成物質が同じであれば隆起速度と降雨量によって決定され、堆積域幅の影響は小さいようである。他の条件が同じであれば、堆積域の広さは隆起域の侵食基準高度となる扇頂高度を規定し、隆起域全体の高度に影響を与えると考えることができる(堆積域が広い方が隆起域の平均高度は高くなる)が、堆積域が堆積物で埋められて運搬物質の通過域となった以降は地形変化に大きな違いが見られない。ただし、堆積域の幅が狭いほうが比高が比較的小さなうちに谷の発達が進むために谷幅が広くなって“山地”が分裂する傾向がある。
**Ouchi, S. 2015. Experimental landform development by rainfall erosion with uplift at various rates. Geomorphology 238: 68-77.