17:15 〜 18:30
[HGM14-P01] 250mDEMを用いたアジア太平洋地域の地形分類ポリゴンの作成
★招待講演
キーワード:オブジェクトベース領域分割、DEM、地形分類、GMTED2010、アジア太平洋
標高データ(DEM)を用いた斜面の地形分類は,急斜面や谷頭部など崩壊危険地形の把握,斜面の粒度や侵食抵抗性の推定,地震による地盤の揺れやすさの推定など,様々に用いられてきた.しかし従来,ピクセルベースで行われており,DEMの高解像度化に伴うノイズの増大や,スケール依存性の解消へのアプローチが難しかった.研究代表者は過去に,DEMから計算した傾斜・凸部の分布密度・尾根谷密度の3つの地形量を用いて,平野・段丘・丘陵・山地や火山地を分類した小縮尺の地形分類図を,ピクセルベースで自動的に作成する手法を開発し(岩橋,1994),SRTM30(USGS)の1kmメッシュDEMを用いた世界の地形分類図を作成した(Iwahashi and Pike, 2007).本研究では,過去の研究成果を踏まえつつ発展させ,東アジア・東南アジア・米国西海岸のGMTED2010(USGS)から再補間した250mメッシュDEMを用いて,ポリゴンベースの地形分類を行った.
DEMのようなラスタ画像による分類は,まず特徴量を求めてデータを作成し,データの閾値処理や多変量解析・データマイニング等によって分類するのが通常である.本研究では,分類の前に,オブジェクト領域分割(Baatz and Schäpe,2000)によって,類似した特徴量を持つ範囲のポリゴンを作成し,その後ポリゴン内の統計量を用いて,k-meansクラスタリング(MacQueen, 1967)により類似した地形をまとめ,地形を分類した.特徴量は,従来の傾斜・凸部の分布密度・尾根谷密度の3つを用いた.ポリゴンベースでは,ピクセルベースと比べてデータ量が大幅に減るため,使える分類手法の幅が大幅に増える.オブジェクト領域分割に用いる地形量の選択やチューニング,領域分割の際のスケール,どうやって分類するか,また分類の際のチューニングにも,様々な選択肢がある.本発表では,アジア太平洋地域での試行錯誤について紹介する.
分類結果は,日本やアメリカ西海岸等,造山帯に属する比較的平均勾配が高く地形の多様性がある地域では,低湿地の抽出のほか,段丘・扇状地や丘陵など中間的な地形の区分にも良好な性能を示した.一方,大陸のデルタ地形のような平坦かつ単調な地形では,微地形を効果的に区分する程の分解能は持っていないようであった.山岳地については岩盤分類に近いものになっていると推測されるが,日本のような中緯度帯と熱帯雨林では,第四紀火山の侵食の様子が異なっており,気候による地域差を考慮しなければならない可能性がある.
本研究は,科学研究費補助金 基盤C「高解像度DEMを用いたグローバルな防災に資する全球の自動地形分類図の作成」の一部として行ったものである.ポリゴンベースでの分類は,先に述べたように様々な分類手法が可能であり,さらに,ポリゴン属性に既存の主題図データを追加する事も可能である.今後様々な試行錯誤を行いつつ,分類範囲を全球に広げていく予定である.
引用文献
Baatz, M. and Schäpe, A. (2000): Multiresolution segmentation: an oprimization approach for high quality multi-scale image segmentation, In: Strobl, J., Blaschke, T., Griesebner, G. (Eds.), Angewandte Geographische Informations-Verarbeitung XII. Wichmann Verlag, Karlsruhe, pp. 12 – 23.
岩橋純子(1994):数値地形モデルを用いた地形分類手法の開発.京都大学防災研究所年報,37(B-1),141-156.
Iwahashi, J. and Pike, R. J. (2007):Automated classifications of topography from DEMs by an supervised nested-means algorithm and a three-part geometric signature.Geomorphology,86,409-440.
MacQeen, J. (1967): Some methods for classification and analysis of multivariate observations, Berkley Symposium on Mathematical Statistics and Probability, Vol. 1, pp.281-297.
DEMのようなラスタ画像による分類は,まず特徴量を求めてデータを作成し,データの閾値処理や多変量解析・データマイニング等によって分類するのが通常である.本研究では,分類の前に,オブジェクト領域分割(Baatz and Schäpe,2000)によって,類似した特徴量を持つ範囲のポリゴンを作成し,その後ポリゴン内の統計量を用いて,k-meansクラスタリング(MacQueen, 1967)により類似した地形をまとめ,地形を分類した.特徴量は,従来の傾斜・凸部の分布密度・尾根谷密度の3つを用いた.ポリゴンベースでは,ピクセルベースと比べてデータ量が大幅に減るため,使える分類手法の幅が大幅に増える.オブジェクト領域分割に用いる地形量の選択やチューニング,領域分割の際のスケール,どうやって分類するか,また分類の際のチューニングにも,様々な選択肢がある.本発表では,アジア太平洋地域での試行錯誤について紹介する.
分類結果は,日本やアメリカ西海岸等,造山帯に属する比較的平均勾配が高く地形の多様性がある地域では,低湿地の抽出のほか,段丘・扇状地や丘陵など中間的な地形の区分にも良好な性能を示した.一方,大陸のデルタ地形のような平坦かつ単調な地形では,微地形を効果的に区分する程の分解能は持っていないようであった.山岳地については岩盤分類に近いものになっていると推測されるが,日本のような中緯度帯と熱帯雨林では,第四紀火山の侵食の様子が異なっており,気候による地域差を考慮しなければならない可能性がある.
本研究は,科学研究費補助金 基盤C「高解像度DEMを用いたグローバルな防災に資する全球の自動地形分類図の作成」の一部として行ったものである.ポリゴンベースでの分類は,先に述べたように様々な分類手法が可能であり,さらに,ポリゴン属性に既存の主題図データを追加する事も可能である.今後様々な試行錯誤を行いつつ,分類範囲を全球に広げていく予定である.
引用文献
Baatz, M. and Schäpe, A. (2000): Multiresolution segmentation: an oprimization approach for high quality multi-scale image segmentation, In: Strobl, J., Blaschke, T., Griesebner, G. (Eds.), Angewandte Geographische Informations-Verarbeitung XII. Wichmann Verlag, Karlsruhe, pp. 12 – 23.
岩橋純子(1994):数値地形モデルを用いた地形分類手法の開発.京都大学防災研究所年報,37(B-1),141-156.
Iwahashi, J. and Pike, R. J. (2007):Automated classifications of topography from DEMs by an supervised nested-means algorithm and a three-part geometric signature.Geomorphology,86,409-440.
MacQeen, J. (1967): Some methods for classification and analysis of multivariate observations, Berkley Symposium on Mathematical Statistics and Probability, Vol. 1, pp.281-297.