日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM14] 地形

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

17:15 〜 18:30

[HGM14-P02] 能登半島西岸の離水波食地形を用いた旧汀線高度の検討

*小林 航1浜田 昌明1奥山 大嗣2山本 博文3 (1.北陸電力株式会社、2.元 福井大学、3.福井大学)

キーワード:海食洞、波食ノッチ、旧汀線高度

能登半島西岸では,最近数1000年の累積的な地殻変動に関して,統一的な見解は得られていない.その理由として,完新世の旧汀線高度を表す明瞭な指標が得られていないことが挙げられる.指標の1つとして波食ノッチがあるが,本地域の海食崖には塩類風化由来の窪みが発達するため,それとの区別が難しい(小林ほか,2015).また波食ノッチは,岩相の差や節理などに分布が規制される,周囲の地形によって海面より高い位置に形成されるといった場合があるため,旧汀線高度の認定には精査が必要である.
伊藤ほか(2002)は,越前海岸において海食洞内の波食ノッチを調査し,その分布高度は旧汀線高度とほぼ一致していることを示した.能登半島西岸でも,節理などの構造沿いに発達した海食洞の内部に波食ノッチが見られ,その分布は地質状況とは無関係なことが多い.また海食洞内部は風雨にさらされないため,風化の影響も少なく,波食ノッチの識別が行いやすい.そこで本研究では,能登半島西岸の志賀町高浜~富来付近において,離水した海食洞内の波食ノッチの分布高度を調査し,旧汀線高度解明のためのデータ取得を試みた.また,海食洞の外にある波食ノッチについても,波食棚を伴い分布が地質構造に支配されないものは,旧汀線高度判読の対象とした.なお,判読の信頼性を上げるため,前面にベンチを伴う海食洞のみ選ぶ,ノッチの高度計測は波が収束する海食洞の奥ではなく手前側で行うといった点に留意した.
調査の結果,上記の地形から認定した旧汀線高度は,標高約2 mに集中することが判明した.分布地点が近いことを考慮すると,これらの地形は同じ時期に形成されたと推定できる.つまり,少なくともこれらの地形の形成以降,地殻の傾動をもたらすような変動は起こっていないと考えられる.
参考文献
伊藤大輔・木下慶之・山本博文,2002,越前海岸にみられる海食洞と旧汀線高度について.福井大学教育地域科学部紀要 第Ⅱ部(自然科学),54,19-46.
小林 航・浜田昌明・山口弘幸・高山陶子・石神慎太郎・平松良浩,2015,能登半島沿岸の海食崖に分布する微地形の形状と成因.日本地球惑星科学連合2015年大会予稿集,HGM22-P04.