日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM14] 地形

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

17:15 〜 18:30

[HGM14-P03] 日本における巨大山体崩壊の規模−頻度分布

*吉田 英嗣1 (1.明治大学)

キーワード:山体崩壊、体積、指数近似

斜面崩落や地すべりなどに代表される斜面変動の規模−頻度分布特性に関する検討は,これまでに数多くなされてきた.一方,最大規模の斜面変動とも捉えられる火山体の巨大崩壊については,必ずしも十分に規模と頻度との関係が議論されてきていない.また,巨大山体崩壊の発生状況は,相対的により小規模な斜面変動が有する規模−頻度分布特性と連関させうるものなのか否かについても,よくわかっていない.本研究では,以上の諸課題に応えるべく,巨大山体崩壊の規模−頻度分布特性を検討した.巨大山体崩壊は大災害をもたらすポテンシャルを持ち,その規模−頻度分布特性の理解は,この現象の発生予知や被害評価にとって有益となるといえる.日本の火山の巨大山体崩壊に関する著者自身による既存のリスト(吉田2010)を拡張したもの,また,より小規模な斜面崩壊事例を集約した町田ほか(1987)のデータを用い,日本における体積規模107m3以上の斜面変動の規模−頻度分布特性を検討した.その結果,規模−頻度分布は指数関数式すなわちlogN(x)=a-bxによってあらわされ,大規模な現象ほど低頻度であることが明らかとなった.また,事象の「起こりやすさ」を示す上記式のb値は,0.7−0.8となることが見出された.さらには,Ohmori and Hirano (1988)における建設省(当時)集計の1975−1983年の斜面変動データを援用した結果、105−6m3規模の斜面変動まではb値が上記と同等であると解釈された.以上により,火山体における巨大山体崩壊(108m3以上)の発生確率や再来周期についての具体的なイメージが得られた.すなわち,日本における最近1000年間程度の巨大山体崩壊の発生状況や,最近数年間での相対的に小規模な斜面変動の発生状況からみて,本研究が得た規模−頻度分布特性を示す経験式は,実質的には最近数万年間での発生状況を示す内容とみなせることを指摘した.例えば,109m3程度以上の山体崩壊は日本において1000−2000年程度の周期で発生する,と確率的に見積もられる.このことは,巨大山体崩壊が地形発達史的時間スケールからみて決して「まれな」現象ではないということを示しているに他ならない.