日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM14] 地形

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

17:15 〜 18:30

[HGM14-P05] 多摩川上流域における最終氷期以降の河成段丘形成過程と支流の地形特性との関係

*高橋 尚志1須貝 俊彦1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:河成段丘、多摩川、支流、沖積錐、土石流、合流点

山地河川は支流の合流が多く,支流からの流水や土砂の流入やその様式が河川地形や堆積物配分に大きく影響しているとされる(島津,1990・1991;野上,2010など).しかし,支流合流の影響を踏まえた河成段丘地形発達史の研究は蓄積が少なく,土砂生産の場である支流域斜面と本流河谷の関係やその気候変動に伴う変化に関しては,これまで十分な議論がなされていない.本報告では,多摩川上流域において,ArcGISを用いた流域の地形および水系解析によって求めた各支流の地形特性と合流点付近の最終氷期以降の河成段丘地形発達の関係について検討を行う.
多摩川は関東山地の笠取山(1,953 m)に端を発し,東京湾に注ぐ河川である.本報告では,多摩川本流の小河内ダム~青梅市街地の区間を研究対象地域とする.対象地域の基盤は,四万十帯および秩父帯小仏層群に属する付加体堆積岩類より構成される.対象地域には,最終氷期以降に形成されたとされる河成段丘面群が多摩川の河谷に沿って分布する.最高位の青柳面は海洋酸素同位体ステージ(MIS)5.5に形成された河谷を埋める厚い礫層から構成されることから,青柳面は最終氷期中の堆積段丘面であると考えられている(高木,1990).
青梅市軍畑より上流に分布する青柳面は河谷の横断方向に傾斜し,主に支流の合流点付近に不連続的に分布する.この区間で観察される青柳面構成層は,下部は本流性円礫層から構成されるものの,上部は支流性角礫層より構成され,この角礫層中には箱根東京軽石(Hk-TP;65 ka;青木ほか,2008)が挟在する(高橋・須貝, 2016).青柳面は支流によって開析されており,これらの支流の流出口付近の河床勾配は概ね150~300 ‰で,土石流が停止することなく本流へと合流する土石流渓流(島津,1990・1991)である.一方,青柳面の河谷横断方向への勾配は概ね100~150 ‰である.これは,島津(1990・1991)の示した土石流停止勾配(80 ‰)よりも急勾配ではあるが,青柳面を開析する支流流出口付近の勾配と比較すると緩い.また,この勾配を保ったまま,傾斜した青柳面を本流現河床の位置まで延長させた場合の高度は,青柳面構成層中の本流性円礫層の上限高度と概ね一致する.
以上のことから,土石流渓流合流点付近に分布する青柳面は,最終氷期中に支流からの土石流によって形成された沖積錐を起源とする地形面であり,LGM以降に行われた本流の側刻によって段丘化した地形(toe-cut terrace;Larson et al,2015)であると推測される.最終氷期中は本流河谷の埋積に伴って支流の河床勾配も減少したものの,土石流停止勾配よりも急勾配であったために支流からの土砂供給は本流の河谷埋積終了後も継続し,本―支流合流点付近を中心に沖積錐が形成されたと考えられる.その後,後氷期に本流が下刻するのに伴って支流も下刻を行い,支流の河床勾配は増加したと推測される.
文献
青木ほか (2008) 第四紀研究, 47(6), 391-407;Larson et al. (2015) Progress in Physical Geography, 39(4), 417-439;野上 (2010) 地形, 31(3), 301-315;島津 (1990) 地理評, 63(8), 487-507;島津 (1991) 地理評, 64(8), 569-580;高木 (1990) 第四紀研究, 28(5), 399-411;高橋・須貝 (2016) 日本地理学会発表要旨集, 89.