17:15 〜 18:30
[HGM14-P07] 岩種の硬度差を利用した河川の砂礫にはたらく破砕・摩耗作用の解明
キーワード:砂礫、破砕・摩耗作用、岩種組成、円磨度、足尾山地
河川の砂礫は運搬される過程で破砕・摩耗し,粒径を減ずるとともに新たな粒子を生産している.この「生産作用」は「分級作用」と共に,上流から下流にかけて細粒化傾向を示す砂礫の分布に寄与すると考えられているが,両作用の卓越条件等は未だ明らかとなっていない.発表者らは,生産作用のはたらきに焦点をあて『礫』だけではなく,礫から生産されているであろう『砂』までの幅広い粒度の特徴を調べることで「礫の破壊に伴う砂の生成」を捉えることができると考えている.具体的には,岩質(硬度差)と粒径を揃えた,岩種組成(量比)および粒子の形状(円磨度)の下流方向への変化に注目している.粒子は破砕することで角張り,摩耗することで細かい粒子を生産しながら丸みを帯びる.また,摩耗により生産された細かな粒子は角張っていることから,円磨度という指標は「生産作用」のはたらきを捉えることに適していると考える.
北関東の足尾帯(付加コンプレックス)を流れる渡良瀬川水系の2支流(秋山川・粟野川)において,上流側・下流側の2地点をそれぞれ設定した.粒径はふるい分けを基本としたため,中間径で評価した.野外では,大礫~中礫(径128~32 mm)100~150個について,室内では,中礫(径32~4 mm)および細礫~粗粒砂(径4~0.5 mm)150~200個について,岩種組成およびチャートと頁岩の円磨度を粒度ごとに調べた.細礫以下の粒子は,デジタルマイクロスコープ(首都大学東京地理学教室所有)を用いて岩種を同定した.円磨度の測定は径4 mm以上の礫についてはKrumbein(1941)の印象図を,径4 mmより細かい粒子は,画像解析型粒度分析装置FF-30micro(同上)に搭載されている画像解析ソフトウェアPIA-Proを用いた.本装置ではKrumbeinの円磨度印象図の階級値と高い相関がある“O. Bluntness”(Pirard1993MS)を得ることができ,この値を独自に求めた換算式から“換算Krumbein円磨度”として再計算した.
秋山川(勾配約1/100)では,岩種組成のデータを基にした「チャート/頁岩比(以下,ch/sh)」が径128~2 mmのどの粒径でも下流方向に増加し,また,径32 mmより細かい頁岩砂礫は下流方向に丸くなるという結果が得られた.調査した2地点間ではチャート礫の供給がほとんどないことから,頁岩は破砕し(角張り),粒径によっては同時に摩耗する(丸みを帯びる)作用を受けながら,細粒粒子を生産していると考えられる.チャート粒子でも下流方向へ円磨度が変化することから,チャートでも同様の生産作用がはたらいている可能性が高い.粟野川(勾配約1/200)はch/shの変化量が秋山川よりも小さい傾向を示したが,秋山川同様に砂礫に生産作用がはたらいていると考えられる.加えて,2河川ではチャート礫の円磨度変化に対照的な傾向が表れたことから,本研究を進めることにより,丸みを帯びやすい頁岩礫だけでは捉えにくい河川勾配と破砕・摩耗作用のはたらきの関係を捉えることができる可能性がある.
謝辞
本内容は平成27年度笹川科学研究助成(学術研究部門複合系:助成番号27-612)による助成を受けて実施した研究の一部である.
引用文献
Krumbein, K. C. 1941. Jour. Sed. Pet. 11: 64–72.
Pirard, E. 1993MS. Doctoral Thesis submitted to University of Liege (in French).
北関東の足尾帯(付加コンプレックス)を流れる渡良瀬川水系の2支流(秋山川・粟野川)において,上流側・下流側の2地点をそれぞれ設定した.粒径はふるい分けを基本としたため,中間径で評価した.野外では,大礫~中礫(径128~32 mm)100~150個について,室内では,中礫(径32~4 mm)および細礫~粗粒砂(径4~0.5 mm)150~200個について,岩種組成およびチャートと頁岩の円磨度を粒度ごとに調べた.細礫以下の粒子は,デジタルマイクロスコープ(首都大学東京地理学教室所有)を用いて岩種を同定した.円磨度の測定は径4 mm以上の礫についてはKrumbein(1941)の印象図を,径4 mmより細かい粒子は,画像解析型粒度分析装置FF-30micro(同上)に搭載されている画像解析ソフトウェアPIA-Proを用いた.本装置ではKrumbeinの円磨度印象図の階級値と高い相関がある“O. Bluntness”(Pirard1993MS)を得ることができ,この値を独自に求めた換算式から“換算Krumbein円磨度”として再計算した.
秋山川(勾配約1/100)では,岩種組成のデータを基にした「チャート/頁岩比(以下,ch/sh)」が径128~2 mmのどの粒径でも下流方向に増加し,また,径32 mmより細かい頁岩砂礫は下流方向に丸くなるという結果が得られた.調査した2地点間ではチャート礫の供給がほとんどないことから,頁岩は破砕し(角張り),粒径によっては同時に摩耗する(丸みを帯びる)作用を受けながら,細粒粒子を生産していると考えられる.チャート粒子でも下流方向へ円磨度が変化することから,チャートでも同様の生産作用がはたらいている可能性が高い.粟野川(勾配約1/200)はch/shの変化量が秋山川よりも小さい傾向を示したが,秋山川同様に砂礫に生産作用がはたらいていると考えられる.加えて,2河川ではチャート礫の円磨度変化に対照的な傾向が表れたことから,本研究を進めることにより,丸みを帯びやすい頁岩礫だけでは捉えにくい河川勾配と破砕・摩耗作用のはたらきの関係を捉えることができる可能性がある.
謝辞
本内容は平成27年度笹川科学研究助成(学術研究部門複合系:助成番号27-612)による助成を受けて実施した研究の一部である.
引用文献
Krumbein, K. C. 1941. Jour. Sed. Pet. 11: 64–72.
Pirard, E. 1993MS. Doctoral Thesis submitted to University of Liege (in French).