日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM14] 地形

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

17:15 〜 18:30

[HGM14-P08] 高等学校地理Aにおける地形を扱う学習の内容・展開に関する考察
―単元間の連携と実生活との関わりに注目して―

*小倉 拓郎1林 紀代美2青木 賢人2 (1.金沢大学人間社会環境研究科・院、2.金沢大学地域創造学類)

キーワード:地理教育、地形学習、関連性、実用性

高等学校の地理歴史科・地理は、系統地理学(自然地理学・人文地理学)および地誌学で構成されている。そのため、人文科学・社会科学・自然科学の学問領域が複合されている特色を持つ。学習指導要領における自然地理学の扱いでは、人間生活とのかかわりなどについて考察することに重点を置いている。学習指導要領の中でも、「世界諸地域の成果・文化を地理的環境や民族性と関連付けてとらえ、その多様性について理解させるとともに、異文化を理解し尊重することに重要性について考察させる(地理A)」際に、地理的環境のひとつとして自然環境が挙げられている。「自然環境を構成する諸要素のうち、地形、気候などの主な要素の分布の特色を世界的な視野から大観させ、諸地域の自然環境の差異や類似性に気付かせるとともに、各構成要素は相互に有機的に関係しながら諸地域の人々の生活・文化に対して様々な役割を果たし、意味を持っていることを理解させる。また、中学校社会科地理的分野の内容や生物・地学的な事象の学習内容も踏まえつつ、広い視野から学べるよう工夫する必要がある。(地理A)」と解説されている。しかし、現行の地理教育では暗記学習と事実の網羅的かつ羅列的な取り扱いをされていることが指摘されており(竹部 1998)、とりわけ動態的な自然環境を捉えることが難しい状態にある。
そこで、本研究では、より人間生活とのかかわりと考察に重点を置いている地理Aについての自然地理学的単元での地形に関わる内容の扱いを整理する。その上で当該単元やその後の人文地理学的な単元とのかかわりを考察する。
地理Aの学習目標は、「現代世界の地理的な諸問題を地域性や歴史的背景、日常生活との関連を踏まえて考察し、現代世界の地理的認識を養うとともに、地理的な見方や考え方を培い、国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う」と設定されており、グローバルなスケールでの学習と日常生活レベルのミクロなスケールでの主体的な学習が期待される。その中でも、生活圏の諸課題の地理的考察の単元に、「自然環境と防災」が設置され、地形を含めた自然地理学分野の実生活への応用が期待されている。このように、人間生活とのかかわりを目標とする地理の趣旨に適合している構成となっているため、実生活に不可欠である科目構成となっている。その上でより実生活に科目の内容を結びつけることを目的とするために、現状の学習指導要領や教科書の改善点を探す意義は高い。また、近年の地理総合の設立・必修化の議論の際に、現行の地理Aが基礎となって科目の再編成が行われる可能性が高いため、地理Aの位置づけや指導方法・内容の考察をすることは必要である。
研究手法としては、まず現行で使用されている地理Aの教科書6冊について地形に関する用語を抽出する。頻出の用語については、地形の単元でどのように使用されているのかを整理する。その上で、他の単元での登場箇所について抽出し、前述の地形の単元の中で学習した内容がどのようにして応用されているのか関係性を明らかにする。これにより、現行の地理Aの教科書の範疇では限界性のある用語の、より有意義な利用について検討することができる。
また、地理Aが目標とする「現代世界の地理的な諸問題を地域性や歴史的背景、日常生活との関連を踏まえて考察し、現代世界の地理的認識を養うとともに、地理的な見方や考え方を培い、国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う」ことが実際に達成されているのかを評価するために、抽出した教科書に登場する地形用語・現象について主要な新聞で用語検索を行う。期間は、東日本大震災の影響を考慮して過去3年分とする。これにより、実社会で見かけたり扱われたり注目されている事象・現象の中で、教科書に扱われている地形用語がどの程度実生活において役に立つものであるかを考察できる。よって、教科書中での地形学的内容と実生活で利用する情報との乖離性について考察できる。考察の詳細については当日報告する。