日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR15] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2016年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 101A (1F)

コンビーナ:*須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、水野 清秀(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、米田 穣(東京大学総合研究博物館)、座長:須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、水野 清秀(独立行政法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)

09:00 〜 09:15

[HQR15-01] 液流動化地における連続貫入試験の実施例

*木村 英人1 (1.東邦地水株式会社)

キーワード:再液流動化、連続貫入試験の利点、標準貫入試験の欠点

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震およびその最大余震によって地層の液状化・流動化現象(以下液流動化),地波現象が発生した.この地震によって沿岸地域だけでなく内陸部においても盛土・埋土の液流動 化が認められた.地層の液流動化は,地下埋設管等の浮き上がりや支持杭基礎による建築物の抜け上がり,摩擦杭基礎や直接基礎建築物の沈下および傾動等の被 害を与えたが,その反面地層の液体化によるS波の減衰によって倒壊には至らなかった.また,構造物によっては,水平に戻したり沈下部 を持ち上げたりすれば再度使用可能であるケースが多く認められたため,本調査地は液流動化被害を受けた埋土層分布域に位置する建築構造物の復元工法として 鋼管杭施工によるジャッキアップが選定されていた.施工にあたり支持層深度および層厚確認のためN値測定が必須であったが,1m毎にN値測定を実施する通 常の標準貫入試験ではなく,50cm毎にN値測定を実施する連続貫入試験を採用した.これは液流動化層のN値から見た深度方向の分布状況と,極力ノンコア 区間を作らず採取試料の詳細な観察を実施することにより,標準貫入試験とオールコアボーリングの中間調査と位置づけ,限りなく単元調査法に近づけた試みで あり,被災してから1ヶ月に満たない時期の調査としても現在まで確認できた中では他に類を見ない希有な例と考えられる.調査方法は,各建築物近傍の1地点 (合計6地点)においてL=10-15mの連続貫入試験を実施としたが,先行して敷地中央部にあたる1地点のみL=20mまで実施し,本地点の各試料はそ の場で接写を行い詳細な試料観察は屋内(Workstation上)において実施した.調査の結果,L=20m孔地層観察を元に地層構成は次の通りに区分した.①盛土層(N値4/32-9):層厚 0.40-1.25mで砕石・コンクリート・シルト混じり細粒砂-細粒砂混じりシルトの推定非液流動化層,②埋土層砂層(N値0/20-12):層厚 2.20-4.95mで含水の多い極細粒砂-細粒砂の液流動化層で特に基底部全体と中間部においてN値3以下(最小値0/20)を認める,③埋土層粘土層 (N値1-5):層厚0.85mでレンズ状分布の細粒砂混じりシルトの推定液流動化層,④前浜後浜堆積物層(N値4/32-50以上):層厚 1.90-7.40mで黒色葉理の発達する細粒砂の非液流動化層,⑤外浜堆積物層(N値14-50以上):確認層厚13.60mで塊状無層理で不規則な砂 粒子の配列やシルトが混入(生物擾乱)や砂管・泥管・貝殻微細片が混入する細粒砂-シルト混じり細粒砂の非液流動化層,の5区分である.本調査方法の長所 として,①N値測定を原則としているため建築ボーリングでも適用可能,②地層流動化跡を発見出来る可能性がある(再液状化危険の発見),反面留意点とし て,①含水が非常に多く試料が落下しやすいため落下防止用バスケット付シューが必要,②試料の接写において極力試料表面を平らにならし全砂粒子にピントを 合わせる,③必ず単元調査が可能な技術者が担当する,事が挙げられる.本調査にあたり,土地の使用履歴調査(聞き取り,過去の空中写真判読,液状化履歴等)や地層の単元調査(層相,液流動化単元等),簡易地下水流動図作成,等層厚線図作成を実施しているので,液流動化調査はほぼ 地質汚染調査と同手法で実施されるべきという認識が得られた.