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[HQR15-10] 古人骨の同位体比からみた縄文時代生業の長期持続可能性
キーワード:自然人類学、先史考古学、同位体生態学
縄文時代は1万年以上の長期間にわたって狩猟採集漁猟を主たる生業とした文化が継続した点で特異的である。我々は、地球研プロジェクト「地域に根ざした小規模経済活動と長期持続可能性」(代表・羽生淳子)の一環として、遺跡から出土する縄文時代の人骨からコラーゲンを抽出し、その炭素・窒素同位体比の時代比較を、東京湾沿岸と青森県の2地域に着目して進めている。東京湾沿岸では、縄文時代中期に爆発的に遺跡数が増加したのち、後期初頭に激減するというダイナミックな人口動態が復元されている。この現象に着目して、縄文時代中期に積極的な植物利用によって人口増大をはたすが、特定の食料資源に偏った生業はレジリアンス(復元力)の低下を招き、寒冷期における長期間の持続可能性には結びつかなかった、という仮説を検証する。現在、東京湾沿岸と青森県から出土した縄文時代中期から晩期の人骨資料の分析を進めており、2つの地方での時代変化から、縄文時代の狩猟採集社会における寒冷化・海退イベントへの反応を検討するための予備的なデータを提示する。生態学的な視点と社会学的な視点の両面から、縄文時代の生業と社会の変化について議論する。