日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR15] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2016年5月26日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、水野 清秀(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、米田 穣(東京大学総合研究博物館)

15:30 〜 16:45

[HQR15-P09] 東京湾におけるカキ礁の発達過程と生態

*野口 真利江1黒田 貴文中村 賢太郎1遠藤 邦彦2 (1.株式会社 パレオ・ラボ、2.日本大学)

キーワード:東京湾、カキ礁、発達過程

東京湾内湾の沿岸部では、小櫃川河口干潟などで少なくとも20年以上前からマガキの群生(コロニー)は確認されてきた。北部沿岸の江戸川河口近くの三番瀬付近では、1980年代に埋め立て事業により造成され、少なくとも干潟が発達した1990年代にはコロニーが観察されており、2000年頃にいくつかのカキ礁が出現しはじめていた。カキ礁出現による生態系への影響は、漁業者をはじめとする様々な人々の関心を集めたが、なぜ東京湾の干潟の中で三番瀬のみにカキ礁が成立したのか、また礁によって形成された生態系と、その成立条件である環境要因との関係については、明らかにされていない。
三番瀬の現生カキ礁は、主として低潮位付近に発達し大潮の干潮時には部分的に露出するのみである。通常は水面下に没しているが、干出時にはマガキのリレー戦略(鎮西,1982)を目にすることができる。このカキ礁は急成長したため一時期世間の注目を集めた。2008年以来2015年まで継続的に観察を行ってきたが、2008年をピークとして、それ以後は集中豪雨や台風などによる江戸川河口からの放水などにより、縮小傾向にあった(野口ほか,2015など)。この拡大縮小の様子は、2008年からの観測に基づき経年変化と珪藻群集について発表され(Noguchi,2015)、徐々に明らかにされつつある。
本研究ではカキ礁を形成するカキ殻に着目し、礁の発達とカキの成長について明らかにすることを目的とする。マガキは水質,気象条件などに加え,栄養塩や水温,生息密度などによって成長速度や形態に変化があるとされている(鎮西,1982など)。しかし、マガキは二枚貝の中では成長線の観察が難しいとされ(例えば、Koike,1980)、成長と形態変化について解明されていない部分が多い。そこで礁最盛期に採取されたカキ殻について、殻表面にある板状構造をもつ成長脈と、殻の形態について観察を行い、礁の発達過程における殻の成長と形態について検討する。
引用文献
Koike, H.(1980) Seasonal dating by growth line counting of the clam, Meretrix lusoria. The university museum, University of Tokyo, Bulletin, 18, 1-104.
鎮西清高(1982)カキの古生態学(2).化石,32,19-27
野口真利江・黒田貴文・遠藤邦彦(2015)千葉県船橋沖干潟,三番瀬のマガキ礁.「日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層(遠藤邦彦著)」コラム-3,112-115,冨山房インターナショナル.