11:30 〜 11:45
[HRE20-03] CO2地中貯留サイトにおける坑井情報と弾性波探査情報を活用した地質モデル構築の試み:長岡サイトの例
キーワード:CO2地中貯留、長岡サイト、堆積学、地質モデル、坑井情報と震探情報の活用
地中貯留サイトとして地質情報に乏しい帯水層を選定する場合,利用できる坑井情報や弾性波探査情報は限られる.しかし,貯留層を特徴づけるためには,地質モデル構築は欠かせない.この現状を克服するためには,既存の地質情報の有効活用に加え,得られた坑井情報と弾性波探査情報を適切に統合することが求められる.そこで,CO2地中貯留に使用する塩水性帯水層の地質モデル構築手法を提案する.具体的には,(1)坑井データを用いて地層の堆積環境を把握し,地層境界面として使用するシーケンス境界を認定する,(2)シーケンス境界を使用したボクセルモデルを構築する,(3)坑井情報を空間的に広げる際の不確実性を減らすため,弾性波探査情報を考慮した岩相,孔隙率,浸透率の3次元モデルを構築する.本発表では,長岡サイトにおける地質モデル構築例を紹介する.
長岡プロジェクトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2が圧入された.塩水性帯水層は,前期更新世の灰爪層に対比された.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.各坑井では物理検層データが得られ,IW-1では貯留層のコア試料が採取された.またCO2圧入時から現在まで,地下でのCO2挙動を観測するために物理検層によるモニタリングが実施されている.
初めに,IW-1から採取されたコア試料の堆積相解析と粒度分析を実施し,貯留層の堆積環境を把握した.貯留層にはラビンメント面が認められ,その上部は上方細粒化から上方粗粒化サクセッションで特徴づけられる.貯留層はプロデルタ~デルタフロント部から構成されると解釈される.デルタフロントとプロデルタは,含泥率が約40%を閾値として区分される.
次に,各坑井の地層を対比するため,坑井物理検層データを用いた.IW-1におけるコア試料と自然ガンマ線検層の比較から,自然ガンマ線検層の深度変化は含泥率の深度変化と類似することと,デルタフロントとプロデルタの堆積環境は自然ガンマ線強度が約75APIを閾値として区分されることが分かった.このことは,当サイトの自然ガンマ線検層は,堆積環境の識別ツールとして活用できることを示す.自然ガンマ線検層とコア試料に基づく堆積相解析の比較から,各坑井の堆積シーケンスとシーケンス境界を認定した.また,自然ガンマ線強度と孔隙率,孔隙率と浸透率を調べたところ,両者とも正の相関が認められた.シーケンス境界と物性同士の相関の情報は,地質モデル構築の際に活用する.
最後に,地質モデルの枠組みを作成するため,弾性波探査データを使用した.各坑井における地層のシーケンス境界は,Petrel(Schlumberger社製)を用いて複数の弾性波探査断面で追跡され,それらを補間することでシーケンス境界の空間的広がりを把握した.そして,2つのシーケンス境界によって定義される地層についてグリッド区分し,ボクセルモデルを作成した.地質モデル構築では,各ボクセルに岩相や孔隙率・浸透率の値を割り振った.岩相や物性値を空間的に割り振る際には,弾性波探査情報を活用した.本研究では,物理検層と弾性波探査情報を関連づけられるGDI(Geological Driven Integration)解析から得た孔隙率の3次元分布モデルをガイドとし,前述の孔隙率,自然ガンマ線強度,浸透率の相関係数を拘束条件とし,collocated cokrigingを用いた逐次ガウスシミュレーションによって岩相と浸透率の3次元分布モデルを構築した.
上記手順に基づき得られた岩相と浸透率の3次元分布は,東部では泥質かつ浸透率が低い傾向を示す.この結果は,既存の地質調査において示された概ね西側から東側への砕屑物供給系が存在したとする古地理学的知見と整合する.一方,モニタリングによるCO2の挙動観測の結果は,最も西側に位置する観測井OB-3でCO2の到達が遅れることを示す.この観測結果は,得られた地質モデルの妥当性を支持する.
長岡プロジェクトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2が圧入された.塩水性帯水層は,前期更新世の灰爪層に対比された.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.各坑井では物理検層データが得られ,IW-1では貯留層のコア試料が採取された.またCO2圧入時から現在まで,地下でのCO2挙動を観測するために物理検層によるモニタリングが実施されている.
初めに,IW-1から採取されたコア試料の堆積相解析と粒度分析を実施し,貯留層の堆積環境を把握した.貯留層にはラビンメント面が認められ,その上部は上方細粒化から上方粗粒化サクセッションで特徴づけられる.貯留層はプロデルタ~デルタフロント部から構成されると解釈される.デルタフロントとプロデルタは,含泥率が約40%を閾値として区分される.
次に,各坑井の地層を対比するため,坑井物理検層データを用いた.IW-1におけるコア試料と自然ガンマ線検層の比較から,自然ガンマ線検層の深度変化は含泥率の深度変化と類似することと,デルタフロントとプロデルタの堆積環境は自然ガンマ線強度が約75APIを閾値として区分されることが分かった.このことは,当サイトの自然ガンマ線検層は,堆積環境の識別ツールとして活用できることを示す.自然ガンマ線検層とコア試料に基づく堆積相解析の比較から,各坑井の堆積シーケンスとシーケンス境界を認定した.また,自然ガンマ線強度と孔隙率,孔隙率と浸透率を調べたところ,両者とも正の相関が認められた.シーケンス境界と物性同士の相関の情報は,地質モデル構築の際に活用する.
最後に,地質モデルの枠組みを作成するため,弾性波探査データを使用した.各坑井における地層のシーケンス境界は,Petrel(Schlumberger社製)を用いて複数の弾性波探査断面で追跡され,それらを補間することでシーケンス境界の空間的広がりを把握した.そして,2つのシーケンス境界によって定義される地層についてグリッド区分し,ボクセルモデルを作成した.地質モデル構築では,各ボクセルに岩相や孔隙率・浸透率の値を割り振った.岩相や物性値を空間的に割り振る際には,弾性波探査情報を活用した.本研究では,物理検層と弾性波探査情報を関連づけられるGDI(Geological Driven Integration)解析から得た孔隙率の3次元分布モデルをガイドとし,前述の孔隙率,自然ガンマ線強度,浸透率の相関係数を拘束条件とし,collocated cokrigingを用いた逐次ガウスシミュレーションによって岩相と浸透率の3次元分布モデルを構築した.
上記手順に基づき得られた岩相と浸透率の3次元分布は,東部では泥質かつ浸透率が低い傾向を示す.この結果は,既存の地質調査において示された概ね西側から東側への砕屑物供給系が存在したとする古地理学的知見と整合する.一方,モニタリングによるCO2の挙動観測の結果は,最も西側に位置する観測井OB-3でCO2の到達が遅れることを示す.この観測結果は,得られた地質モデルの妥当性を支持する.