日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE20] 地球温暖化防止と地学(CO2地中貯留・有効利用,地球工学)

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 301B (3F)

コンビーナ:*徳永 朋祥(東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、座長:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

13:45 〜 14:00

[HRE20-06] 苫小牧CCS大規模実証試験における地震波干渉法のモニタリングへの適用性検討

*新色 隆二1東中 基倫1阿部 進1土屋 真2斉藤 秀雄2薛 自求3利岡 徹馬3 (1.株式会社地球科学総合研究所、2.日本CCS調査株式会社、3.地球環境産業技術研究機構)

キーワード:地震波干渉法、二酸化炭素、CCS、モニタリング

経済産業省が日本CCS調査株式会社に委託して実施している苫小牧CCS大規模実証試験事業の一環として,苫小牧港西港区沖の港湾区域内にケーブル長3.6m,受振点間隔50mの常設型OBCが敷設され,2014年7月より常時観測が実施されている。
本報告では,この常時観測データを用いる受動的地震探査手法の二酸化炭素貯留範囲を把握するための安価な繰り返し反射法探査としての適用性を検討することを目的として,地震波干渉法を自然地震記録に適用した事例を報告する。
OBCによる常時観測は,地震活動のモニタリングおよび繰り返し弾性波探査を目的としたものであるが,6年間のモニタリング期間中に亘って長期連続観測記録が取得されるため,期間中の任意のデータに対して地震波干渉法による地下構造イメージングが可能である。
対象地域では,圧入中および圧入後の二酸化炭素の挙動把握を目的として繰り返し弾性波探査が計画され,圧入前のベースライン調査として2009年に三次元弾性波探査,2013年に二次元弾性波探査が既に実施されている。2016年度に予定されている二酸化炭素圧入開始以降,定期的なモニター調査が実施されるが,エアガン振源を用いた繰り返し弾性波探査には高額の費用がかかるため,頻繁なモニター調査の実施は困難である。これに対して地震波干渉法は,連続観測記録の任意の期間のデータに対して適用可能であるため,通常の繰り返し弾性波探査と比較して,短い時間間隔で貯留層内の二酸化炭素挙動を把握できる可能性がある。
そこで,常設型OBCによる連続観測記録に地震波干渉法を適用し,二酸化炭素挙動モニタリングへの適用性に関する検討を実施した。2015年1月1日から2015年11月21日までに観測された自然地震記録のうち,北緯41.5度から43.75度,東経140.25度から143度の範囲に位置し,かつ震源距離が48 kmよりも長い地震のうち,M2.0以上の地震を対象とした。対象とした全251イベントのうち,P波およびS波の初動が明瞭に認められる158イベントについてコーダ波を含むP波部分を抽出し,イベント毎に地震波干渉法を適用した。適用結果を全て重合した記録に対して反射法データ処理を適用し,反射法重合断面図を得た。得られた重合断面とエアガン振源による重合断面を比較した結果,地震波干渉法による重合断面上で貯留層に相当する反射面が確認された。
本報告の結果は,地震波干渉法による貯留層深度での反射法イメージングの有意性を示すものであり,また相対的に安価な繰り返し探査反射法の手法となる可能性を示すものである。
今後は,異なる期間のイベントを用いた場合の処理結果の再現性,処理対象イベント数と重合結果の品質との関係を明らかにし,二酸化炭素挙動モニタリングにおける繰り返し反射法探査として地震波干渉法の適用性を精査する。