日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC16] 人間環境と災害リスク

2016年5月23日(月) 09:00 〜 10:15 105 (1F)

コンビーナ:*青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

09:30 〜 09:45

[HSC16-03] SfM/MVS技術による湛水面標高モデルの生成に関する検討-洪水氾濫と河道閉塞を例に

*中埜 貴元1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:SfM/MVS、湛水面標高モデル、湛水深、洪水氾濫、河道閉塞

2015年9月に発生した関東・東北豪雨では,鬼怒川において堤防の越水や決壊が発生し,茨城県常総市や下妻市などで甚大な被害が発生した.この水害の対応においては,ポンプ車等による湛水の排水が重要な役割を担った.また,2004年新潟県中越地震や2008年岩手・宮城内陸地震,2011年の台風第12号による紀伊半島を中心とした豪雨災害では,地すべりや深層崩壊に伴い多数の河道閉塞が発生し,ポンプ排水などが行われた.このような湛水の排水計画立案や決壊リスク評価等には,迅速な湛水状況の把握が重要である.
湛水後から短期間での従来の湛水深把握手法としては,航空機やヘリコプター等からの撮影写真・映像等の判読によりマニュアル的に湛水位置と湛水面標高を推定し,湛水前の標高データとの組み合わせから推定する方法や,航空レーザ計測により発災後の地形・湛水面を把握し,湛水前の標高データとの差分から求める方法(小浪ほか,2009等)などが考えられる.前者の空中写真や映像の取得は,天候の影響を受けるものの,範囲が狭い場合は無人航空機の活用も考えられ,比較的容易である.後者の手法は正確な推定が可能であるが,天候の影響を受けるとともに,計測・処理には時間を要することが多い.一方で,近年は複数の画像から三次元形状を復元するSfM(Structure from Motion)/MVS(Multi-View Stereo)技術が発展し,空中写真等からのデジタル表層モデル(DSM)の生成が迅速に行える.そこで本研究では,過去の地震に伴う河道閉塞及び洪水氾濫における湛水事例において,湛水後に撮影された空中写真からSfM/MVS技術により湛水面の標高モデルを生成し,湛水前の標高データとの差分から概略的な湛水深の推定を試みた.
今回用いた空中写真は,基本的には航空機による鉛直写真で,オーバーラップ率は60%,サイドラップ率は30%である.また,この手法を用いる場合,いくつかの前提条件と課題がある.まず,湛水面モデルの生成に関しては,(1)水底などが写っていないこと,(2)水面の動き(急流),波立ち,動いている雲およびその影の写り込み,ハレーションなどが無いこと,が挙げられる.また,洪水氾濫の場合,湛水面よりも上に飛び出た地物や浮遊物も合わせてモデル化されてしまうため,それらがない範囲への適用に限るか,それらを除去する技術の開発が必要である.河道閉塞の場合は,周囲の樹木や湛水面上の浮遊物の影響で湛水面モデルが生成されない箇所が生じることがある.次に,湛水深の推定においては,河道閉塞の場合,湛水面下にある崩壊土砂の形状は推定できないことから,その部分は従来と同様,仮定する必要がある.発表においては,従来法による推定値や現地調査による湛水深との比較結果についても報告する.