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[HSC16-04] 西ブータンで発生した氷河湖決壊洪水の衛星観測
キーワード:氷河湖決壊洪水、PALSAR-2、ブータン
2015年6月28日にブータン西部で氷河湖決壊洪水(GLOF: Glacier Lake Outburst Flood)が発生したため、現地機関からの要請に基づき、宇宙航空研究開発機構は陸域観測技術衛星「だいち2号」搭載の合成開口レーダPALSAR-2を用いた災害緊急観測を実施した。ALOS衛星画像から作製したブータン氷河湖台帳に登録されている氷河湖の分布を参照しつつ、決壊前後のPALSAR-2後方散乱強度画像を目視判別したところ(Fig. 1)、決壊した氷河湖は西ブータン・モチュ川流域にある一つ(28º4’7.7"N, 89º34’50.0"E)と特定された。前縁モレーンにも明瞭な亀裂が確認され(Fig. 1a)、決壊によって生じたものと考えられる。
さらにPALSAR-2をはじめ複数の衛星画像から、2010年以降の氷河湖の拡大過程を調べたところ、同年3月まではほとんど湖面積は変化しておらず、3月から4月にかけて急激に拡大した(+48.0%)ことがあきらかになった。決壊後(7月2日)には、湖面積は半分以下に減少した(-52.9%)。これまで一般的に氷河湖の拡大は、十年以上の時間をかけて徐々に進行するものだと考えられてきたが、今回のGLOFはこれとは異なるプロセスで発生したものであることが分かった。この氷河湖は決壊前の面積が0.05km2、標高4300mにあり、1990年代以前に既に氷河からも分離している。面積が小さく氷河縮小の影響も受けにくいため、GLOFの危険度は低いと予想されていたが、山岳地域でのGLOFリスクを検討する際には、このような短期間での氷河湖拡大過程も考慮に入れる必要がある。
さらにPALSAR-2をはじめ複数の衛星画像から、2010年以降の氷河湖の拡大過程を調べたところ、同年3月まではほとんど湖面積は変化しておらず、3月から4月にかけて急激に拡大した(+48.0%)ことがあきらかになった。決壊後(7月2日)には、湖面積は半分以下に減少した(-52.9%)。これまで一般的に氷河湖の拡大は、十年以上の時間をかけて徐々に進行するものだと考えられてきたが、今回のGLOFはこれとは異なるプロセスで発生したものであることが分かった。この氷河湖は決壊前の面積が0.05km2、標高4300mにあり、1990年代以前に既に氷河からも分離している。面積が小さく氷河縮小の影響も受けにくいため、GLOFの危険度は低いと予想されていたが、山岳地域でのGLOFリスクを検討する際には、このような短期間での氷河湖拡大過程も考慮に入れる必要がある。