日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC16] 人間環境と災害リスク

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)

17:15 〜 18:30

[HSC16-P05] ジオパークを通じた自然環境学習による防災意識の形成-白山手取川ジオパークの事例-

*青木 賢人1林 紀代美1 (1.金沢大学地域創造学類)

キーワード:防災意識、ジオパーク、学習

著者らは、ジオパークを通じた地学/地形学的な教育が、地域住民の防災意識の形成にどのような影響を与えているかについて考察を行っている。
考察の対象地域としてる石川県白山市は平成の大合併によって1市2町5村が合併した広域自治体であり、そのエリア内では火山噴火、活断層地震、土砂災害、洪水、津波、高潮、豪雪などの多様な災害が発生する可能性を有している。ただし、これらの災害は市域全域に対して均等にリスクがあるのではなく、域内はリスクの質的・量的な空間的多様性を有している。一方で、市域の全域が白山手取川ジオパークに認定されており、様々な機会を通じて住民に対して地学的/地形学的特性と、それから生じ得る災害リスクに関する情報が提供されている。
青木・林(2015a:JpGU)では、白山市に住む地域住民が、どのような災害リスクに対する認識を有しているかについて、アンケート調査に基づいた分析を行った。その結果、地域住民は自身が居住するエリアが有する災害リスクを必ずしも正しく認識できておらず、市内の他地域で高リスクとなる災害に関しても高いリスク意識を有していることが確認された。これは、行政を通じて市域の多様な災害リスクに関する情報が均質に提供されることによって、市域全体のリスクと居住地のリスクを分別できなくなっている可能性を示唆している。
さらに、青木・林(2015b:APGN)では、アンケート対象とした市民と同地域に居住する中学生を対象としたアンケートを実施し、そのリスク認識を分析した。中学生は一般市民に比べ、ジオパーク学習に接する機会が多く、一般市民に比して地学的/地形学的理解が高いことが予想される。分析の結果、全体として中学生は一般市民以上に居住エリアのリスクと市域全体のリスクを分別できていない傾向にあることが示された。ただし、一般市民に比して中学生の方が正確な知識に基づいた正しいリスク認識を持っている災害種や被験者もあり、その背景に関する詳しい分析が必要となっていた。
本発表では、これらの結果に基づいてさらに分析を進め、中学生のリスク認識にジオパークへの認識や学習結果がどのように反映しているのかをクロス分析することで、誤ったリスク認識が形成される過程を考察し、ジオパークを通じた地学/地形学学習が、市民の防災意識の向上に適切に寄与できるための視点を提供したい。