日本地球惑星科学連合2016年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT08] Geoscientific applications of high-definition topography and geophysical measurements

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*早川 裕弌(東京大学空間情報科学研究センター)、佐藤 浩(日本大学文理学部)、内山 庄一郎(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、Wasklewicz Thad(East Carolina University)、Giordan Daniele(National Research Council, Rome)、小花和 宏之(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

17:15 〜 18:30

[HTT08-P02] A survey for the larger block distribution on the block slopes around the summit area of Mount Tateshina, central Japan: an application of combined on-site measurements with UAV-SfM method providing clues as to the understanding of block slope development

*菊池 基1吉田 英嗣1小花和 宏之2 (1.明治大学、2.東京大学)

キーワード:block slope, photogrammetry, rapid mass-movement, periglacial process

従来,岩塊斜面に関してはさまざまな研究がなされており,その形成要因は,斜面崩壊や地すべりといった重力性の物質移動,もしくは周氷河作用による礫の生産およびその移動・堆積,の二つが主とされてきた.しかし、これらの成因論は試案にとどまるものが多く、今もなお議論の余地が残されている.本研究の対象地である蓼科山頂部のように,岩塊斜面はアクセスの比較的困難な場所に発達し,さらには斜面傾斜が30°前後と大きいこと,岩塊斜面を構成する礫間が空隙となっていることがあり,斜面の成立条件としての地形測量の実施が一般に困難であることなどから,これまで十分な調査がなされてこなかった.
本研究では,岩塊斜面地形をつくる巨礫の配置状況について現場にて計測調査を実施し,さらにUAVを用いた空撮により,上記のような特徴を持つ岩塊斜面調査におけるその有用性を検討した.現場では蓼科山の西向きおよび南向き斜面に斜面傾斜方向に沿う測線を設け,地形縦断面測量,礫の長径・長軸方向・風化程度の測定を行った.また,南向き斜面においてUAVによる空撮を実施し,現場で得たデータとの比較に基づき,その有用性を確かめた.以下に現時点での結果を示す.
岩塊斜面を構成する礫の長径の分布および長軸方向によれば,西向き斜面では斜面下部に巨礫が多く分布する箇所があり、また南向き斜面では巨礫が斜面下方に多く分布する傾向が顕著であった.後者については,UAV空撮に基づくオルソ写真から判読される巨礫の分布と整合した.同様に空撮写真から作成したDSMにより,岩塊斜面の詳細な地形図が作成され,斜面の地形条件と斜面構成物質としての巨礫の配列との関係が明確となった.巨礫の長軸方向は,両斜面とも,斜面と平行に配列される傾向にあることが明らかとなった.
以上により,斜面を構成する礫は重力性の移動によって巨礫が斜面下方に集中した後,周氷河作用が働くことによって長軸方向が斜面の傾斜方向と平行になるように配列されたとも推測される.現在の蓼科山では,その標高からみて周氷河作用が強く働いている可能性は低い.さらに,山体の形成期が最終氷期の後半であることから,山頂ドーム形成以後の急激な気候環境変化に対する斜面ごとの応答の違いにより,形成プロセスに差異が生じ,全体としては複合的要因によってできた斜面である可能性が指摘される.ただし,岩塊斜面の末端部は舌状で,斜面の縦断形から小崖が確認できたことなどから,岩塊斜面の形成要因として最も重要な役割を果たしたのは周氷河性作用であると考えられる.
今後,西向き斜面においてもUAVを用いた空撮を実施し,現場からのアプローチが実質不可能な範囲も含めた,面的な地形情報の把握に務めたい.