17:15 〜 18:30
[HTT08-P10] Estimation of dip angles of faults near the surface in Toyama by eigenvalues and eigenvectors of the gravity gradient tensor
富山県内には,呉羽山断層をはじめ,石動断層,高清水断層,黒菱山断層等の活断層が存在する。それらの活断層について,これまで多くの地形学的研究,地質学的研究,地球物理学的研究がなされてきた.
地震防災を考える上で,活断層が動いた時に,どれくらいの範囲がどの程度揺れるのかを予測する強振動シミュレーションが重要な役割を果たす。このシミュレーションでは,断層長,断層幅の他に,断層傾斜角が重要なパラメータとなっている。断層傾斜角は,通常,反射法地震波探査等により推定するが,この探査は非常に高額である。重力探査による断層形状の推定も可能であるが,重力異常だけでは解がユニークに決定しないため,やはり地震波探査結果や深層ボーリングデータといった補助データが必要である。
近年,重力偏差探査という言葉が日本でも散見されるようになってきた。重力偏差探査とは,地下に埋没している物体による引力3成分(gx, gy, gz)の各方向への微分値(gxx, gxy, gxz, gyx, gyy, gyz, gzx, gzy, gzz)を測定するものである。この微分値9個をまとめて,重力偏差テンソルとよんでいる。重力偏差テンソルは,対称テンソルであることが知られており,また対角成分の和は,ラプラス方程式により,0となる。したがって,重力偏差テンソルは,5つの独立成分よりなっており,測定点1点につき,この5つの情報を得る。従来の重力探査は,地下に埋没している物体が生じさせる引力3成分のうち,鉛直下向きの成分gzのみを計測し,構造探査に利用していた。したがって,重力偏差探査は,重力探査に比べ,5倍の情報量をもっている。
この重力偏差テンソルの固有値・固有ベクトルを用いた断層あるいは構造境界の傾斜角の推定手法が,Beiki and Peterson (2010), Beiki (2013), 楠本(2015)により開発されてきている。この手法は,重力勾配テンソルの最大固有ベクトルが構造の方を向くという特性を利用し,そのベクトルと地表面がなす角度から断層あるいは構造境界の傾斜角を,地震波探査やボーリングデータ等の補助データなしで推定する。
富山県内では,重力偏差計による重力偏差測定が行われていないが,既存の重力異常から重力偏差テンソルの各成分を計算する手法がMickus and Hinojosa (2001)により確立されているため,この手法により,富山県内の重力異常から重力偏差テンソルを推定した。Mickus and Hinojosa (2001)の手法とは,①重力異常をフーリエ変換し,②フーリエ領域での積分により引力ポテンシャルを求め,③それを各方向に2階微分し,④フーリエ逆変換を施すことで,空間領域での重力偏差テンソルの各成分を得る。
富山県内の石動断層,高清水断層,呉羽山断層,黒菱山断層について,上述の方法により断層傾斜角を推定したところ,いずれも45°~60°の範囲に推定された。これらの断層は,地表踏査から,いずれも45°~60°の傾斜角をもつことが判明しており,既存研究結果(例えば,活断層研究会, 1991)と調和的な結果を得た。これまで200 kmを超えるようなスケールの断層傾斜角に対して有効であることは示されていたが,今回の研究により,10 ~20 km程度の断層傾斜角推定にも有効なことが示され,今後の活断層研究に有用な情報を提供できるのではないかと考えている。
地震防災を考える上で,活断層が動いた時に,どれくらいの範囲がどの程度揺れるのかを予測する強振動シミュレーションが重要な役割を果たす。このシミュレーションでは,断層長,断層幅の他に,断層傾斜角が重要なパラメータとなっている。断層傾斜角は,通常,反射法地震波探査等により推定するが,この探査は非常に高額である。重力探査による断層形状の推定も可能であるが,重力異常だけでは解がユニークに決定しないため,やはり地震波探査結果や深層ボーリングデータといった補助データが必要である。
近年,重力偏差探査という言葉が日本でも散見されるようになってきた。重力偏差探査とは,地下に埋没している物体による引力3成分(gx, gy, gz)の各方向への微分値(gxx, gxy, gxz, gyx, gyy, gyz, gzx, gzy, gzz)を測定するものである。この微分値9個をまとめて,重力偏差テンソルとよんでいる。重力偏差テンソルは,対称テンソルであることが知られており,また対角成分の和は,ラプラス方程式により,0となる。したがって,重力偏差テンソルは,5つの独立成分よりなっており,測定点1点につき,この5つの情報を得る。従来の重力探査は,地下に埋没している物体が生じさせる引力3成分のうち,鉛直下向きの成分gzのみを計測し,構造探査に利用していた。したがって,重力偏差探査は,重力探査に比べ,5倍の情報量をもっている。
この重力偏差テンソルの固有値・固有ベクトルを用いた断層あるいは構造境界の傾斜角の推定手法が,Beiki and Peterson (2010), Beiki (2013), 楠本(2015)により開発されてきている。この手法は,重力勾配テンソルの最大固有ベクトルが構造の方を向くという特性を利用し,そのベクトルと地表面がなす角度から断層あるいは構造境界の傾斜角を,地震波探査やボーリングデータ等の補助データなしで推定する。
富山県内では,重力偏差計による重力偏差測定が行われていないが,既存の重力異常から重力偏差テンソルの各成分を計算する手法がMickus and Hinojosa (2001)により確立されているため,この手法により,富山県内の重力異常から重力偏差テンソルを推定した。Mickus and Hinojosa (2001)の手法とは,①重力異常をフーリエ変換し,②フーリエ領域での積分により引力ポテンシャルを求め,③それを各方向に2階微分し,④フーリエ逆変換を施すことで,空間領域での重力偏差テンソルの各成分を得る。
富山県内の石動断層,高清水断層,呉羽山断層,黒菱山断層について,上述の方法により断層傾斜角を推定したところ,いずれも45°~60°の範囲に推定された。これらの断層は,地表踏査から,いずれも45°~60°の傾斜角をもつことが判明しており,既存研究結果(例えば,活断層研究会, 1991)と調和的な結果を得た。これまで200 kmを超えるようなスケールの断層傾斜角に対して有効であることは示されていたが,今回の研究により,10 ~20 km程度の断層傾斜角推定にも有効なことが示され,今後の活断層研究に有用な情報を提供できるのではないかと考えている。