日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT09] Geographic Information Systems and Cartography

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 304 (3F)

コンビーナ:*小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、有川 正俊(東京大学空間情報科学研究センター)、座長:小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、有川 正俊(東京大学空間情報科学研究センター)

16:00 〜 16:15

[HTT09-09] Influence on Residents Emerged from Location Changes of Convenience Stores, through Comparison of Pre and Post Earthquake Disaster in Rikuzentakata City

*佐藤 和平1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院園芸学研究科)

キーワード:Tohoku Regional Pacific Coast Earthquake, Rikuzentakata, Accessibility, GIS, Network Analyst

本論文は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波被害を受けた岩手県陸前高田市における、コンビニエンスストアの立地の変化による影響を分析するものである。住民意識およびアクセシビリティの観点から、2つの調査手法によって震災前と現在の状態を比較した。アクセシビリティとは交通の便の良さの度合いを意味し、本論文ではGISの到達圏解析によって求めた、その地点から最寄りのコンビニエンスストアまでの道路距離の度合いを指す。
住民意識調査では、陸前高田市内の周辺環境の異なる7区域の住民を対象としてアンケートを実施した。2015年9~10月に各戸へアンケートを配布したのち、郵送で回収した。配布数1,012に対し、有効回答数は382だった。調査内容として、自宅から最寄りのコンビニエンスストアまでどの程度遠く感じるかなどを設定した。アクセシビリティの解析は市内全域を対象とし、ArcGISのNetwork Analystを用いて、震災前と現在について各店舗から一定の道路距離による到達圏を求めた。
住民意識調査では、震災前の最寄りコンビニエンスストアについて、「遠いと感じる」が42.6%、「やや遠いと感じる」が22.3%、「あまり遠いと感じない」が19.9%、「遠いと感じない」が15.1%となった。一方現在の状態については、「遠いと感じる」から順に、16.9%、14.5%、26.9%、41.7%という結果となった。震災後、回答者が最寄り店舗を近いと感じるよう変化していることが分かる。また、アンケートの対象区域ごとに結果を比較すると、震災後ほとんどの区域で「遠いと感じる」の回答率が減り「遠いと感じない」の回答率が増える傾向にあったが、被災によって失われた中心市街地に接していた津波の到達点付近の区域では、逆の傾向がみられた。
空間分析では、コンビニエンスストアに対するアクセシビリティは、震災前には主に中心市街地のあった平野部で高かったのに対し、現在はその外縁部のより広範な範囲においてアクセシビリティが高いことが分かった。これは震災前に平野部に集中していた店舗が失われ、建築制限が行われていない場所に分散的に新たな店舗が建てられたことが原因である。
最後にアンケートを行った区域の空間分析の結果を、住民意識の結果と比較した。対象区域の大半では、震災後のアクセシビリティが上昇している。また津波の到達点付近の区域のアクセシビリティの変化は場所によって異なり、明らかなアクセシビリティの上昇は見られない。以上から、住民意識の「遠いと感じる」の回答率が減る傾向の区域と、空間分析でアクセシビリティの上昇がみられる場所は一致していることが分かる。異なる2つの調査手法が明らかにした施設の立地の変化による住民への影響は、概ね一致するといえる。
本研究は日本デジタル道路地図協会より、全国デジタル道路地図研究用データの寄与を受けて行った。