日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 101A (1F)

コンビーナ:*陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)

15:00 〜 15:15

[HTT21-12] 富山湾の表層から深層までの食物網解析~炭素・窒素安定同位体比からのアプローチ

*大塚 朋貴1張 勁1稲村 修2 (1.富山大学、2.魚津水族博物館)

キーワード:安定同位体、炭素・窒素、食物網

気候変動等に伴う環境変化が海洋食物網に与える影響を明らかにするためには、食物網の現状把握が必要である。本研究では、水深約200mを境に異なる水槐構造をもつ富山湾における食物網の現状把握を目的とした。富山湾では、200m以浅の表層と200m以深の深層に生息する魚類・動物プランクトンの生物試料と、沈降粒子・海底堆積物・POM(懸濁態有機物)を採取した。また、日本海中央部の大和海盆で動物プランクトンとPOMを採取し、炭素・窒素安定同位体比解析を行った結果、以下の知見が得られた。
1、富山湾の水生生物は、表層・深層とも表層0m付近のPOMを起点とする食物連鎖上に位置し、海面付近で生産された植物プランクトンが基礎生産者であると考えられた。
2、δ13Cに着目すると、富山湾の動物プランクトンは大和海盆に比べ高い値を示し、クロロフィル濃度も富山湾は大和海盆に比べて高かった。これは、基礎生産者である植物プランクトンの増殖速度が富山湾の方が速いためと推測された。
3、δ15Nに着目すると、深層魚は表層魚に比べ高い値を示した。また、深層では腐肉食者や表層に比べ高いδ15N値をもつ動物プランクトンがみられ、これらが深層の栄養段階を高めていると推測された。さらに、富山湾と大和海盆のPOMのδ15N値は平均で約3.3‰と低く、基礎生産者のδ15N値が低い可能性が示唆された。