09:30 〜 09:45
[HTT22-03] 小型UAVから撮影された直下視画像と斜め視画像を用いた森林樹冠上のDSM作成
キーワード:UAV (Unmanned Aerial Vehicle)、SfM(Structure from Motion)、DSM(Digital Surface Model)、斜め視画像、森林樹冠
1. はじめに
近年,小型の無人航空機(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)を用いて撮影した複数の画像から地表面の三次元データを作成する手法が注目されている。UAVを用いてステレオペア画像を撮影し,SfM(Structure from Motion)ソフトウェアで処理すると,対象物の三次元点群データ,三次元モデルを作成することができる。さらに,この三次元モデルから,空間解像度数cmのオルソモザイク画像や数値表層モデル(DSM; Digital Surface Model)を得ることもできる。これらは条件によってはレーザ計測と同等の精度が得られるという報告がある(小花和ほか,2014)。一方,植生を対象とした場合,精度が落ちるという報告もされている(Harwin and Lucieer,2012)。これは,画像の解像度が十分でないこと,風により植生が動いてしまうこと,影になっている部分が再現されにくいことなどが原因として挙げられる。そこで本研究では,直下視画像に加えて,斜め視画像を加えてSFMで処理を行うことで,森林樹冠のDSM作成を試み,その再現精度の検証を行った。
2. 研究手法
対象地域は八ヶ岳南麓のカラマツ林(緯度35° 54' 34''N , 経度138° 20' 06''E)であり,2015年7月にUAVを用いて樹冠上から空撮を行った。機材にはK4R(K&S社)を使用した。K4Rは電動マルチコプタ(クワッドコプタ)であり,飛行にはGround Station(DJI社)の自律航行機能を利用した。UAVにコンパクトデジタルカメラGR(RICOH社)を搭載し,1秒間隔で写真を撮影した。K4Rのジンバルは角度を変えることができるため,直下方向に加えて前後方45°の撮影も行った。飛行方向は東西方向であり,約9,000m2の範囲に対し合計823枚の画像を取得した。次に,撮影したステレオペア画像を,SfMソフトウェアPhotoScan(Agisoft社)を用いて処理を行い,三次元点群データ,三次元モデルを作成した上で,オルソモザイク画像・DSMを作成した。これらの処理を,約250m2の範囲に対し,(1)対地高度100mから撮影した直下視画像70枚のみ,(2)(1)に,対地高度50mから撮影した直下視画像54枚を追加(3)(1)に,対地高度50mから撮影した斜め視画像54枚を追加という3パターンの画像を元に解析を行い,作成したDSMの再現性を比較した。
3. 結果と考察
3つのパターンで,空間解像度2~2.5cmのDSMを作成することができた。(1)では実際にギャップになっている部分もモザイクをかけたように,凹凸の少ない平坦な形状として表現されてしまった部分があった。一方,(2)や(3)にもこのような部分はあったが,(1)のものよりは少ないことが確認できた。三次元点群データを上空方向から見たときの画像で,点群がない部分(三次元形状が復元されていない部分)の面積割合を求めたところ,(1)では17.5%,(2)では12.8%,(3)では9.7%となり,直下視画像を加えた場合よりも,斜め視画像を加えた場合の方が,三次元点群データして再現された割合が多いことがわかった。この結果から,直下視画像に斜め視画像を加えることで,特にギャップなど直下視のみでは影になる部分の再現精度が上がる事が明らかになった。同じ枚数の直下視画像を加えた場合よりも再現度の向上率は高く,斜め視画像を加えたことによる効果の高さを示した。
UAVとSfMソフトウェアによってDSMを作成する場合,UAV飛行のコストとリスクを減らし,処理時間を短縮するためにも,より少ない撮影回数,総飛行時間で必要なデータを取得する事が求められる。本研究はそのためのひとつの知見となることが期待される。今後の課題としては,精度のチェック,解像度の向上,斜め視画像の角度・方向の検討などが挙げられる。
4. 参考文献
小花和宏之,早川裕弌,齋藤 仁,ゴメスクリストファー : UAV-SfM手法と地上レーザ測量により得られたDSMの比較, 写真測量とリモートセンシング, 53, pp.67-74, 2014.
Harwin, S. and Lucieer, A.: Assessing the accuracy of georeferenced point clouds produced via Multi-View Stereopsis from Unmanned Aerial Vehicle (UAV) imagery, Remote Sensing, 4, pp.1573-1599, 2012.
近年,小型の無人航空機(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)を用いて撮影した複数の画像から地表面の三次元データを作成する手法が注目されている。UAVを用いてステレオペア画像を撮影し,SfM(Structure from Motion)ソフトウェアで処理すると,対象物の三次元点群データ,三次元モデルを作成することができる。さらに,この三次元モデルから,空間解像度数cmのオルソモザイク画像や数値表層モデル(DSM; Digital Surface Model)を得ることもできる。これらは条件によってはレーザ計測と同等の精度が得られるという報告がある(小花和ほか,2014)。一方,植生を対象とした場合,精度が落ちるという報告もされている(Harwin and Lucieer,2012)。これは,画像の解像度が十分でないこと,風により植生が動いてしまうこと,影になっている部分が再現されにくいことなどが原因として挙げられる。そこで本研究では,直下視画像に加えて,斜め視画像を加えてSFMで処理を行うことで,森林樹冠のDSM作成を試み,その再現精度の検証を行った。
2. 研究手法
対象地域は八ヶ岳南麓のカラマツ林(緯度35° 54' 34''N , 経度138° 20' 06''E)であり,2015年7月にUAVを用いて樹冠上から空撮を行った。機材にはK4R(K&S社)を使用した。K4Rは電動マルチコプタ(クワッドコプタ)であり,飛行にはGround Station(DJI社)の自律航行機能を利用した。UAVにコンパクトデジタルカメラGR(RICOH社)を搭載し,1秒間隔で写真を撮影した。K4Rのジンバルは角度を変えることができるため,直下方向に加えて前後方45°の撮影も行った。飛行方向は東西方向であり,約9,000m2の範囲に対し合計823枚の画像を取得した。次に,撮影したステレオペア画像を,SfMソフトウェアPhotoScan(Agisoft社)を用いて処理を行い,三次元点群データ,三次元モデルを作成した上で,オルソモザイク画像・DSMを作成した。これらの処理を,約250m2の範囲に対し,(1)対地高度100mから撮影した直下視画像70枚のみ,(2)(1)に,対地高度50mから撮影した直下視画像54枚を追加(3)(1)に,対地高度50mから撮影した斜め視画像54枚を追加という3パターンの画像を元に解析を行い,作成したDSMの再現性を比較した。
3. 結果と考察
3つのパターンで,空間解像度2~2.5cmのDSMを作成することができた。(1)では実際にギャップになっている部分もモザイクをかけたように,凹凸の少ない平坦な形状として表現されてしまった部分があった。一方,(2)や(3)にもこのような部分はあったが,(1)のものよりは少ないことが確認できた。三次元点群データを上空方向から見たときの画像で,点群がない部分(三次元形状が復元されていない部分)の面積割合を求めたところ,(1)では17.5%,(2)では12.8%,(3)では9.7%となり,直下視画像を加えた場合よりも,斜め視画像を加えた場合の方が,三次元点群データして再現された割合が多いことがわかった。この結果から,直下視画像に斜め視画像を加えることで,特にギャップなど直下視のみでは影になる部分の再現精度が上がる事が明らかになった。同じ枚数の直下視画像を加えた場合よりも再現度の向上率は高く,斜め視画像を加えたことによる効果の高さを示した。
UAVとSfMソフトウェアによってDSMを作成する場合,UAV飛行のコストとリスクを減らし,処理時間を短縮するためにも,より少ない撮影回数,総飛行時間で必要なデータを取得する事が求められる。本研究はそのためのひとつの知見となることが期待される。今後の課題としては,精度のチェック,解像度の向上,斜め視画像の角度・方向の検討などが挙げられる。
4. 参考文献
小花和宏之,早川裕弌,齋藤 仁,ゴメスクリストファー : UAV-SfM手法と地上レーザ測量により得られたDSMの比較, 写真測量とリモートセンシング, 53, pp.67-74, 2014.
Harwin, S. and Lucieer, A.: Assessing the accuracy of georeferenced point clouds produced via Multi-View Stereopsis from Unmanned Aerial Vehicle (UAV) imagery, Remote Sensing, 4, pp.1573-1599, 2012.